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恋の予感2
風呂を洗いお湯をためながら、樹はうきうきしていた。
(……義兄さんにデートに誘われた。ただ、遊びに行こうじゃなくて、兄さんとデートしようって言ってくれた。これって僕のこと、ちゃんと恋人にしてくれてるってことだよね?)
「うわぁ……デートだ」
なんだか顔がじわじわと熱い。嬉しくってどきどきする。顔が勝手ににやけてしまう。
前に遊園地に連れて行ってもらった時も、すごく楽しかった。今度は動物園。お弁当を持って行こうって。
(……あ。お弁当。おかずとか何作ろうかな。一応材料はいろいろ買ってきたけど、おにぎり作るんなら海苔が必要だよね。鶏肉は明日のお昼用に買ってあるけど、唐揚げにするなら下味つけておかなくちゃ。えっと、唐揚げの下味ってたしか……)
風呂のお湯をためながら、樹はいったん台所に行って、冷蔵庫や棚の中を確認してみた。
お醤油、お酒、生姜とにんにくはチューブのが残ってる。あ……でも、肝心な小麦粉がない。
「樹? なにごそごそやってるんだ?」
不意に声が降ってきて、樹はドキッとして振り返った。
「……あ……明日の弁当のおかず、何作れるか、材料見てた」
「あー……あ、そっか。でも、うちにあるもので作ればいいぞ」
「鶏の唐揚げ。食べたい?」
薫は途端に、おぉっと嬉しそうな顔になり
「作れるのか? 唐揚げ」
「んーと。小麦粉がない。あと、おにぎり作るのに、海苔も」
樹の返事に、薫は部屋の壁の時計を見て
「この時間だと近所のスーパーは閉店ぎりぎりだな。よし。車でぱぱっと買ってくるか。小麦粉と海苔だけでいいか?」
「うん。あとは……大丈夫」
薫はキーケースとピッチと財布を持って、玄関に向かった。
「もし他に何か必要なもの思いついたら、電話してこいな」
そう言って、大急ぎで玄関を飛び出していく。
(……えーと。おにぎりの具は鮭を焼いてほぐして入れるでしょ。鶏肉は……一口大に切って下味用の漬け汁に漬けておいて。あと、ウィンナーは買ってあるから炒めて、それから卵焼きだ)
樹はうきうきしながら、明日のお弁当作りに必要なものを準備した。途中で風呂のお湯を止めてから、鶏肉を冷蔵庫から取り出して、まな板の上に乗せる。
(……?)
玄関の外で、ごそごそと音がしたような気がする。
(……義兄さん? ……にしては帰ってくるの、早すぎるよね……?)
樹は首を傾げて、まな板に包丁を置くと、玄関に向かった。
(……やっぱり誰かいる。義兄さんかな……?)
スーパーが閉店ぎりぎりって言っていたから、やっぱり間に合わなくて帰ってきたのかも。
樹は急いで玄関の鍵を外して、ドアを開けてみた。
「……っ」
「……っ。樹……くん……?」
ドアの外に立っていたのは、冴香だった。
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