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月夜の秘めごと8※
薫は樹に覆い被さって、ちゅくちゅくと唇を吸った。気持ちよすぎてお腹の下のむずむずが止まらない。
ふいに、薫の手が樹の太股を撫でた。樹はびくっと飛び上がって、慌てて薫の手を掴む。
(……そこ、ダメだよ。もうちょっと上にズレたら、僕のふくらんできたものに当たっちゃう。
ああ……でも、義兄さんの手、あったかくて優しくて、気持ちいい……。どうしよう……)
「……すべすべ……だな。おまえの脚」
唇を少し離して、薫が囁く。その声がいつもより掠れて甘かった。
「……にぃ……さ」
「ごめん……ごめんな。なんか……止められない」
(……どうしてそんな、哀しそうに言うの?)
樹は心が痛くなって、薫の目をじっと見つめた。薫はすごく苦しそうな顔をしている。
「樹……俺にこんなことされるの、嫌じゃないか?」
まるで何か悪いことでもしたみたいな薫の顔。
(……嫌だ。そんな顔しないで。いつもみたいに笑ってよ)
「……っや、じゃ、ない。義兄さんのキス、気持ちいい……義兄さんの手、気持ちいいっ」
樹は変な声が出そうになるのを堪えながら、必死で首を振った。薫は何故だかすごく切なそうに笑って
「バカだな……樹。嫌だって、言えよ。変なことするな。兄さんの馬鹿って……怒れよ」
「ううん。嫌じゃ、ないっ」
必死に否定する樹に、薫は息を飲み、はぁぁ……っと大きく息を吐き出すと、樹の顔を両手で掴んで、また甘い甘いキスをくれた。
「颯士。意地張ってないで、声を出せよ」
巧はとても楽しそうだ。
颯士は油断すると漏れそうになる声を、必死に押し殺す。
ベッドの前にある壁一面の鏡には、巧に後ろから抱かれて、だらしなく両脚を開いた颯士の、浅ましい姿が映っていた。
「俺に何されても感じるくせに、無駄な抵抗なんだよ」
ピアスを繋ぐ細い鎖をくいっくいっといたずらに弄んでいた巧の指が、颯士の身体を滑り落ちていく。もう完全に勃起したペニスには、達することを許さない革製の拘束具。颯士の身体は巧の支配下にある。
「久しぶりにあの薬、使ってやろうか?」
ぱんぱんに張り詰めた颯士の陰嚢を揉みしだきながら、巧が耳元で隠微に笑った。颯士は震えながら巧を睨みつけ、無言で首を横に振る。
颯士の目の前で樹を抱く時、頻繁に使う調教用の媚薬。あのおぞましい薬の効果は、骨身に染みて知っている。
初めて巧の家で、無理矢理身体を拓かされた10歳の時から、反抗する度にあの薬で屈服させられた。心も身体もドロドロに溶かされて、逃げようとしても捕まって引き摺り戻されて。あれからずっと、颯士は巧のセックスドールとして、人生の全てをコントロールされている。
「薬……っなんか、要らないっ」
無駄な抵抗とは分かっていても、今更あんなもので身体を狂わされるのは嫌だ。颯士は声を振り絞るようにして、巧に拒絶の意を示す。
「ふうん。だったら、素面で俺を満足させろ。何も分からないガキじゃないんだ。エロく誘って俺をその気にさせてみろよ」
巧は颯士の首についた革製のチョーカーから伸びたリードをぐいっと引っ張ると、颯士の唇にねっとりとキスをした。
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