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第21章.恋を識る。ということ1
「ああ。そうだよ。思春期の男の子は特に性欲が強くなってくるからな。ちょっとした刺激でも、そこが大きくなってしまったりするんだ」
薫は優しく諭すように言ってくれるけど……。
樹だって、そういう知識がまったくないわけじゃない。クラスの連中の中には、しょっちゅうそんな話をしてる子もいるし。
(……でも……義兄さんが言ってるのは、女の子に対してだよね?
僕は男だから、そういう相手は女の子のはずで。義兄さんとキスしてこんな風になっちゃうのは、やっぱり病気でしょ?
叔父さんだって、僕のこと、淫乱のオンナノコだっていつもバカにするし……)
樹は滲んできた涙を瞬きで散らしながら、薫に恐る恐る聞いてみた。
「兄さんと、キスして、僕がこんな風になっちゃうの、兄さんは軽蔑……しない?」
薫はにこっと笑って頷いて
「しないよ、もちろん。だってな、樹」
言いながら、樹の手を掴んでぐいっと引っ張って
「俺もおんなじだ。ほら」
薫は自分の股間に樹の手を持っていくと
「分かるだろう? 兄さんのもデカくなってる」
そっと手をあてさせられて、樹は息を飲んで薫の股間を見た。
(……ほんとだ……。義兄さんの……おっきくなってる……。あの変な飴、舐めたわけじゃないのに……)
黙ってまじまじと見ていると、薫は樹の頭をくしゃっとして
「こら。そんなにじーっと見るなよ。恥ずかしいだろ?」
樹はちょっとぼんやりしながら、顔をあげて薫を見た。薫はものすごく照れ臭そうな顔をしていて、なんだかとっても……可愛い。
「樹は、兄さんのここがこんな風になってるの知って、軽蔑、するか?」
(……僕が、義兄さんのこと、軽蔑? しない! するわけないよ!)
眉を下げた情けない顔で聞いてくる薫に、樹は慌ててぷるぷると首を横に振った。
「……しないっ軽蔑、なんか」
(……だって……。だって。義兄さんが僕とキスしてここがおっきくなったってことは、僕と同じように気持ちいいってなってくれてるってこと、なんだよね?)
前に月城が言っていた。本当に好きな相手が出来たら、その人に触りたい、キスしたいって、思うようになるって。
『今はまだいなくても、そのうち君は、誰かを好きになるかもしれない。そしたらね、その相手と手を繋ぎたい、触りたい、キスしたい、裸でぎゅっと抱き合いたい。そんな風に自然に思えるかもしれないね』
月城はあの時、ちょっと寂しそうにそう言った。
(……僕は義兄さんのことが好きだから、触りたいキスしたいって思ってる。でも、義兄さんには冴香さんっていう女性の恋人がいて……。男の僕なんか好きになってくれるわけないって思ってた。でも……でも……)
自分とキスをして、興奮して気持ちよくなって、おんなじようにあそこがふくらんでくれてるってことは……。
(……義兄さんも……僕のこと……好きって思ってくれてるのかな? 弟だからってことじゃなくて、僕と同じ「好き」でいてくれてるってこと……?)
樹は嬉しくて、でも何だかすごく混乱してしまった。
(……叔父さんは、僕が変な病気で、変態の淫乱だって何回も言ってたけど、じゃあ僕は病気じゃないってこと? 義兄さんの言うように、これは誰でもなること?)
必死に混乱した頭の中を整理していたら、なんだか目の奥が熱くなってきた。
黙り込んでしまった樹を、薫は心配そうに見ている。
(……ダメだ。義兄さんにそんな顔をさせちゃ。僕……僕、何か言わないと)
「樹……?」
薫の手が優しく樹の頭を撫でる。樹の目から、堪えきれずに涙が溢れた。
(……ああ……やだな……。泣いたりしたら、また義兄さんに心配させちゃうのに……)
樹は一生懸命、涙を止めようとしたが、後から後から零れ落ちて、全然止まってくれない。
薫は顔をぎゅっと歪めて、樹をぐいっと抱き締めた。
「泣くなよ、樹。ごめん、ごめんな。びっくりさせてしまったよな。兄さんが悪かった」
(……違うっ違うよ、義兄さん。僕……僕は……。嬉しくって。でも何だかよく、分からなくなっちゃって。義兄さん、悪くないよ。僕は……僕は……)
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