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恋を識る。ということ3※
(……月城……。そうか、忘れていた。
いや……。というより、考えないようにしてたと言うべきか)
樹は月城の恋人で、詳しく問い質してはいないが、あの男と身体の関係があったのだ。
時折見せる子供とは思えない色っぽさも、キスに慣れている様子なのも、この発言も、おそらくは月城との深い付き合いで培われたものだ。
月城はこの唇に、どんな風にキスしていたのだろう。この折れそうな華奢な身体にどんな風に……触れたのか。
樹は、あの男が好きだから、キスしたいと思ったのか。裸で抱き合って、それ以上のことも……。
クラリ……と目眩がした。薫は樹の紅い唇から目を逸らし、ぎゅっと目を瞑った。
胸の奥から込み上げる強烈な怒り。あいつは俺の大切な樹を……。
「……兄さん……?」
樹の声に目を開けると、不安そうな顔でこちらを見ている。薫はもやもやする気持ちを飲み込んで
「忘れさせてやるよ、樹。もうおまえの恋人は俺だけだ」
重く掠れた声は、自分のじゃないように聞こえた。もう自分の中の良心の声も聴こえない。
薫は再び樹の顔を両手で包んで唇を奪うと、そのままソファーに押し倒した。樹はひゅっと息を飲んだが、薫が深く舌を差し入れると、まるで条件反射のように、ちゅくちゅくと懸命に舌を吸う。のしかかって、抵抗を封じて、そろそろと下に手を伸ばした。スカートの裾から手を入れて、樹の股間を探った。辿り着いたボクサーパンツの前は、予想通りふくらんでいた。
「……んっ……んむっ」
布越しにふくらみに触れると、樹はびくんっと飛び上がり、口付けをほどこうともがいた。何か言いかけた口を更に激しく吸いながら、薫は樹のものを下着ごと握りこんだ。
熱く息づく樹のペニス。見た目は女の子でも、間違いなく自分と同じものを持つ雄の身体だ。
前にやはり下着越しに触れた時は、樹が死にそうな顔をして泣き出したから、それ以上のことは出来なかった。
今も、樹は自分に触られるのがショックなのか、急にじたばたともがき出して、必死に口付けをほどこうとしている。薫は樹の舌を強く吸いながら抵抗を封じて、下着の中に手を忍びこませた。
「……っん……んっ……っんーっ」
声を出せない樹が、鼻から切なげな鳴き声を漏らして身を捩る。直に触れたそれは、幼くて華奢な外見に似ず、思ったよりも立派だった。
根本から先に向けて、そっと扱きあげると、まるでそこだけ別の生き物のように、びくびくっと震えた。
自分以外の男のナニを、こんな風に触るのなんか初めてだったが、薫は異常なほど、興奮を覚えていた。
巧の舌が、颯士の背中を這い回る。玩具でかき回されている奥が溶けそうなくらい、熱い。
「んぁっ……あー……っあ……ああっ」
1度出してしまった声は、もう止まらなくなっていた。
あちこち同時に刺激されて、どれにどう反応していいのかも、もう分からない。
「気持ちいいのか? ん? やらしいな、颯士。腰が揺れてるぞ」
笑いながら耳元で囁く巧の声が、悔しいのに更に快感を煽る。
「颯士、顔をあげて、鏡を見てみろ。淫乱な猫が映ってるぜ」
(……やだ、やだやだっ見たくないっ)
「尻尾の玩具咥えて、尻振ってる変態猫だ。ちゃんと動画も撮ってやってるからな。後で見せてやるよ」
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