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慕ぶ月2
「樹、それ脱いだら洗濯機に入れてくれ。汚しちゃったからな、洗ってやるよ」
薫は樹の動揺には気づかない様子で、そう言ってソファーの上に用意した着替えのTシャツとトランクスを指差すと
「シャワー浴びといで」
もう一度樹の頭を撫でて、キッチンに戻って行った。
(……うわ……うわ……うわぁ……)
義兄がいつもと変わらない様子なのが不思議で仕方ない。だってあんなことしちゃったのに。
思い出せば思い出すほど、樹の頬の火照りは増していく。
(……兄さん……平気?おかしなヤツって思ってないの?)
男の子なら誰でも、気持ちよくなっておっきくなるって。確かに義兄のものも、すごく大きくなっていた。こしこしして舐めたら、義兄も気持ちよさそうだった。
(……悪いことじゃ、ないのかな……)
1人でオタオタしている自分が、なんだか恥ずかしくなってきて、樹はベッドから降りると、着替えとバスタオルを抱えて、風呂場に向かった。
朝、結構早くに目が覚めて、隣で丸くなっている樹の可愛い寝顔に、しばらく見入っていた。
昨夜、この子にしてしまったことは、やっぱりいけないことだと思う。でも……出来ることなら、ずっとこうして側にいたい。大切な弟を、おかしな連中から守ってやりたい。
薫は密かに決意していた。
まずは1度、実家に行き、父と義母に樹のことを聞こう。もし彼らが、樹のことを放任して、家出も夜遊びも放置し続けているのなら、自分のところに樹を引き取る。
まだ、学生の身で、人ひとりを養うなんて無理だから、自分が就職するまでの樹の生活費は、父に出してもらうしかない。でも、樹はまだ義務教育だから、それは当然彼らがするべきだろう。自宅にいても金だけ出して、樹の様子をきちんと見てくれていないのだ。だったら彼らの代わりに、自分がその役割を果たす。
もちろん、一緒に暮らすことになっても、昨夜のような邪な行為は封印だ。兄として、弟が真っ直ぐに生きる為のサポートをする。愛しくて仕方ない存在だからこそ、樹にはもっと伸び伸びと素直に真っ当に育って欲しいのだ。
自分のこの想いは、樹が大人になって、自分で生きる道を選べるようになってから、もし伝えられるのなら伝える。無理ならば……そっと心の奥に鍵を掛けて仕舞っておこう。
(……来週末、テスト期間が終わったら、父に連絡して実家に行こう。このアパートで2人暮らしは狭いし、樹の学校も遠い。あっちに近い所にもう少し広い部屋を借りてもいいな)
車があるから、自分は多少大学から遠くなっても通える。
もし樹を引き取って2人暮らしがどうしても無理なら……父に頭をさげて、自分があの家に戻ってもいい。出来れば避けたい最悪の事態だが、このまま何もせずに、樹がどんどん歪んでいくよりはマシだ。
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