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隠れ月6
「遅いな……」
樹が戻らない。
薫は、暇つぶしにパラパラ捲っていた、備え付けのタウン情報誌を椅子に放り出すと、店内奥の通路の方を見つめた。
前にもこんなことがあった。樹を図書館に連れて行った時だ。あの時は、たしか冷房で冷えすぎてお腹を壊していたと言っていたが、もしかしたらまた体調を崩したのかもしれない。
(……ポップコーンと炭酸がまずかったかな)
薫は首を傾げて立ち上がると、トイレの方に向かった。
ドアロックを解除して、扉を開けかけた樹は、不意に目の前に現れた黒い影にはっとした。
次の瞬間、大きな手が伸びてきて、口を塞がれた。
驚愕してもがこうとしたが、そのまま無理やり、トイレの奥に押し込まれた。
見開いた樹の目に映ったのは、口を押さえている男の顔。
その顔に見覚えがあった。隣りのレーンにいた客の1人だ。
「騒ぐなよ。大人しくしてな」
恐怖に竦み上がる樹の目に、その男の後ろから覗き込んでくるもう1人の男の顔が見えた。
男がトイレにロックを掛ける。
「……っぅ、むぐぅ……っ」
樹は必死にもがいて抵抗したが、男2人がかりで壁に完全に押さえ込まれてしまった。
(……やだっなにこれ? 義兄さんっ)
「おい、早くしろよ」
「おまえ、身体押さえとけ」
男たちはギラギラした目で樹を見ながら、低く押し殺した声で囁き合う。
恐怖で頭が真っ白になって、自分の身に、突然降りかかった事態が、理解出来ない。
1人が、樹の身体を羽交い締めにした。もう1人が、悲鳴をあげかけた樹の口に、ハンカチを押し込む。布が喉奥まで達して、うえっとなり、樹の目に涙が滲んだ。
「可愛い顔してるな、あんた。ちょっとだけさ、お兄さんたちといい事しような」
男が笑いながらそう言って、蹴りあげようとした樹の太ももを逆に掬い上げる。
「やべえ。肌、すべすべ」
片脚を上に大きく持ち上げられて、ざらりとした手で内ももを撫でられた。
(……やだっ怖いっこわい怖いっっっ)
「おいっ、おまえだけ楽しむなよ。早くおっぱい出せって」
後ろの男が苛立った声をあげる。
「わかってるよ」
男は舌打ちすると、震えながら身をよじる樹の胸に手を伸ばした。カーディガンのボタンを手荒く外し、中のブラウスの胸元をぐいっと下にさげ
「色、白いな。こっちもすべすべだぜ」
興奮した声で唸るようにそう言って、首筋にいきなり顔を埋めてきた。
(……っやだっっっ)
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