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月の舟・星の海12※

「にいさんの、ここ……。僕の、なかに、いれたい?」 樹の問いかけが、やけに大きく響いた。とろりとした蜜のような甘い香りが、浴室中に一気に立ち込めたような錯覚を起こす。 (……だ、め、だ……樹……) 自分の息遣いが怪しい。キーン……と耳鳴りまでしている気がする。 ピキっと固まって、声も出ないでいる薫に、樹はちょっと不安そうに顔を曇らせ 「僕じゃ、嫌? 気持ち……悪い?」 泣きそうな声で囁く。 (……違うっ。そうじゃない!) 項垂れて、下腹から離れていこうとする樹の手を、がしっと掴んだ。そのまま、自分の熱く脈打つそこに押し当てて 「これを……いれてもいいのか? おまえに」 (……ばか。よせ) 言ってはいけないひと言が、こぼれ落ちる。 樹はぱちぱちと瞬きをして 「うん。にいさんが、嫌じゃないなら……」 言いながら、くるりとこちらに背を向けて、小さな尻をくいっとあげてみせた。 「僕の、ここに……いれて?」 「……っ」 薫は息を飲み、樹の尻の狭間を見つめた。華奢な身体つきは間違いなく13歳のそれなのに、腰を捻って尻を突き出す樹の姿は、ぞくっとするほど婀娜っぽい。首だけ振り返って上目遣いの流し目で誘う、その表情にも妖しい艶めかしさがある。 薫はごくりと唾を飲み込んだ。止めておけ、と警告する自分の良心の声は、高鳴る心臓の音にかき消されて、もう聴こえない。 「樹……いいのか? 辛く、ないか?」 そこにこれを入れてくれとねだるってことは、つまり、月城ともそういう行為をしていたのだ。時折、驚くほど大人びて見えるのは、やはり既に体験済みだったからなのか。 「ぅん。大丈夫。僕の身体はエロいって。おっきいのも、ちゃんと飲み込めるって」 (……っ!?……月城のやつ……っ) こんな少年に、尻でするセックスを教え込んで、そんなゲスなセリフまで吐いていたのか。 目の前が一瞬赤く染まるような、激しい怒りと嫉妬が込み上げてきた。 (……俺の……俺の樹に……よくも……) 薫は、樹の身体をくるんっと自分の方に向かせて、思いっきり抱き締めた。 「樹……っ」 もう絶対に、月城には指1本触らせない。 樹は…… 「にい……さん……?」 驚いて身体を強ばらせ、樹が不安気に自分を呼ぶ。 薫は腕の力を少し緩めると、樹の顔を覗き込んだ。 「樹。おまえの恋人は、月城じゃない。俺だよな?」 「え……うん」 「俺が、抱いてやる。おまえの身体。月城からされたことなんか……全部、俺が忘れさせてやるよ」 樹は大きな目をこぼれ落ちそうなほど開いて、じっと自分を見上げている。薫は安心させるように必死に笑みを浮かべると 「樹は、俺のことが好きだよな? 俺も樹が大好きだ。俺とおまえは、恋人同士だよな? だから……」 真っ直ぐに見つめてくる樹の眼差しに、急に後ろめたさを感じた。薫は樹の頭をかき抱くようにして自分の胸に埋めさせ、視線を逸らすと 「にいさんが、抱いてやる。おまえのこと。大切に大切に……抱いてやるからな」

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