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星を渡る月舟2※
樹の愛らしい反応に煽られて、薫はすっかり興奮しきっていた。
柔らかい唇を幾度もついばみながら、滑らかな肌に指を這わせる。
真っ白だった肌が、自分の愛撫に少しずつ桜色に染まっていくのも、艶めかしくて感動だった。
擦り過ぎて痛々しいほど赤くなっている場所には、そっと触れるだけのキスをする。それ以外の肌には強く吸い付き、所有の赤い印を散らしていった。
ぺたんとした平たい胸に、膨らみ始めた蕾のような小さな粒がひっそりと息づく様ですら、ドキドキするほど愛おしい。
浴室で1度放出したはずの熱が、下腹にまた溜まり始めた。少ない体験では断言は出来ないが、自分の性的指向は男の身体の樹を拒んではいないらしい。
「樹……これ、どうだ? 気持ちいいか?」
舌を伸ばして、胸の尖りをつんつんとつつくと、樹は可愛い声を漏らしながらぴくぴくと震えた。
下から掘り起こすように舐めあげて、更に膨らんだ蕾を、唇で挟んで吸い上げる。
樹はんぅ……っと気持ちよさそうに鳴いて、腰をくねらせた。軽く歯をたててから、舌で転がしてみる。
「ぁぁ……っんぅ……っ」
樹の声に艶が増す。すごく感じているみたいだ。
薫はいったん身体を起こし、自分の下に閉じ込めた華奢な身体を見下ろした。
体毛の薄い下腹に、密やかに息づく男の子の証は、しっかりと育って勃ちあがっている。見下ろす自分の視線に気づいた樹が、脚をもじもじと捩り合わせた。
「や……見ない、でよ」
泣きそうな声。恥じらう仕草が愛らしい。
薫はにこっと笑って
「隠すなよ、樹。おまえの身体全部、兄さんに見せてくれ」
樹は大きく目を見開くと、口をもごもごさせながら恥ずかしそうに目を逸らした。
「綺麗だよ、樹。どこもかしこもすごく綺麗だ。もう兄さん以外の男に見せちゃダメだぞ。おまえの身体を見たり触れたりしていいのは……俺だけだ」
愛しさが込み上げてきて、薫は柔らかい腹に指を這わせながら念を押した。
月城なんかに2度と触らせない。
この美しい身体は自分のものなのだ。
樹はそっぽを向いたまま、口をもごもごさせてから、何故か切なげに自分を見上げて、曖昧に頷いた。
そろそろ下を可愛がってやろう。そう思った途端に、薫は、はたっと気がついた。
男の身体に抵抗はない。むしろ早く抱きたくて身体が疼いている。だが、いざ抱くとなって、戸惑った。アナルセックスは知識としては知っているが、経験がない。
この小さな身体の尻の狭間に息づく、慎ましやかなあの場所に、育ちきった自分のものがいきなり入るのだろうか?
「……にい、さん……?」
身体を見下ろしたまま固まってしまった薫に、樹が不安そうに瞬きをする。
「あ……いや。……あのな、樹。兄さん、男の子は抱いたことがない。おまえの中に……このまま入れてもいいのか?」
樹は目を見張り、じっと薫の顔を見上げていたが、やがて目をうろうろさせて
「僕も、よく、わかんない……けど……。にいさん、ぬるぬるするやつ、ある?」
「ぬるぬるするやつ?」
「……ぅん。お尻に……塗るの」
消え入りそうな樹の言葉に、薫は合点がいって頷くと
「ローションか? そうか、そうだよな……」
冴香を抱く時にはそんなものは必要なかったから、ローションなんかこの部屋にはない。避妊用のゴムならあるが。
(……滑りをよくするもの、だよな)
薫は部屋を見回しながら首を傾げた。
男の一人暮らしなのだ。
そんなものの代用品はまったく思いつかない。
(……仕方ない。ちょっとひとっ走りして買ってくるか)
薫は自分の下腹をせつなく見つめた。せっかくここまでその気になっていて、また服を着て買い物に行くのは……なんともやるせない。だが、樹を抱くために必要であれば、やはり買ってくるしかないだろう。
「樹。ちょっと待っててくれ。にいさん、コンビニに行ってくるからな」
そう言って半分腰を浮かしかけた時、樹のほっそりとした指が、薫の手を掴んだ。
「待って、にいさん。ハンドクリームとか、ある?」
「ん?」
「そういうのでも、だいじょうぶ、だから」
(……ハンドクリームか)
せっかくの提案だったが、この部屋にはそれもない。薫が眉を寄せて考え込むと、樹はもぞもぞと身を起こして
「僕の、バッグ。中に……クリームある、から」
「おまえ、持ってるのか?」
「……ぅん」
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