211 / 448

星を渡る月舟2※

樹の愛らしい反応に煽られて、薫はすっかり興奮しきっていた。 柔らかい唇を幾度もついばみながら、滑らかな肌に指を這わせる。 真っ白だった肌が、自分の愛撫に少しずつ桜色に染まっていくのも、艶めかしくて感動だった。 擦り過ぎて痛々しいほど赤くなっている場所には、そっと触れるだけのキスをする。それ以外の肌には強く吸い付き、所有の赤い印を散らしていった。 ぺたんとした平たい胸に、膨らみ始めた蕾のような小さな粒がひっそりと息づく様ですら、ドキドキするほど愛おしい。 浴室で1度放出したはずの熱が、下腹にまた溜まり始めた。少ない体験では断言は出来ないが、自分の性的指向は男の身体の樹を拒んではいないらしい。 「樹……これ、どうだ? 気持ちいいか?」 舌を伸ばして、胸の尖りをつんつんとつつくと、樹は可愛い声を漏らしながらぴくぴくと震えた。 下から掘り起こすように舐めあげて、更に膨らんだ蕾を、唇で挟んで吸い上げる。 樹はんぅ……っと気持ちよさそうに鳴いて、腰をくねらせた。軽く歯をたててから、舌で転がしてみる。 「ぁぁ……っんぅ……っ」 樹の声に艶が増す。すごく感じているみたいだ。 薫はいったん身体を起こし、自分の下に閉じ込めた華奢な身体を見下ろした。 体毛の薄い下腹に、密やかに息づく男の子の証は、しっかりと育って勃ちあがっている。見下ろす自分の視線に気づいた樹が、脚をもじもじと捩り合わせた。 「や……見ない、でよ」 泣きそうな声。恥じらう仕草が愛らしい。 薫はにこっと笑って 「隠すなよ、樹。おまえの身体全部、兄さんに見せてくれ」 樹は大きく目を見開くと、口をもごもごさせながら恥ずかしそうに目を逸らした。 「綺麗だよ、樹。どこもかしこもすごく綺麗だ。もう兄さん以外の男に見せちゃダメだぞ。おまえの身体を見たり触れたりしていいのは……俺だけだ」 愛しさが込み上げてきて、薫は柔らかい腹に指を這わせながら念を押した。 月城なんかに2度と触らせない。 この美しい身体は自分のものなのだ。 樹はそっぽを向いたまま、口をもごもごさせてから、何故か切なげに自分を見上げて、曖昧に頷いた。 そろそろ下を可愛がってやろう。そう思った途端に、薫は、はたっと気がついた。 男の身体に抵抗はない。むしろ早く抱きたくて身体が疼いている。だが、いざ抱くとなって、戸惑った。アナルセックスは知識としては知っているが、経験がない。 この小さな身体の尻の狭間に息づく、慎ましやかなあの場所に、育ちきった自分のものがいきなり入るのだろうか? 「……にい、さん……?」 身体を見下ろしたまま固まってしまった薫に、樹が不安そうに瞬きをする。 「あ……いや。……あのな、樹。兄さん、男の子は抱いたことがない。おまえの中に……このまま入れてもいいのか?」 樹は目を見張り、じっと薫の顔を見上げていたが、やがて目をうろうろさせて 「僕も、よく、わかんない……けど……。にいさん、ぬるぬるするやつ、ある?」 「ぬるぬるするやつ?」 「……ぅん。お尻に……塗るの」 消え入りそうな樹の言葉に、薫は合点がいって頷くと 「ローションか? そうか、そうだよな……」 冴香を抱く時にはそんなものは必要なかったから、ローションなんかこの部屋にはない。避妊用のゴムならあるが。 (……滑りをよくするもの、だよな) 薫は部屋を見回しながら首を傾げた。 男の一人暮らしなのだ。 そんなものの代用品はまったく思いつかない。 (……仕方ない。ちょっとひとっ走りして買ってくるか) 薫は自分の下腹をせつなく見つめた。せっかくここまでその気になっていて、また服を着て買い物に行くのは……なんともやるせない。だが、樹を抱くために必要であれば、やはり買ってくるしかないだろう。 「樹。ちょっと待っててくれ。にいさん、コンビニに行ってくるからな」 そう言って半分腰を浮かしかけた時、樹のほっそりとした指が、薫の手を掴んだ。 「待って、にいさん。ハンドクリームとか、ある?」 「ん?」 「そういうのでも、だいじょうぶ、だから」 (……ハンドクリームか) せっかくの提案だったが、この部屋にはそれもない。薫が眉を寄せて考え込むと、樹はもぞもぞと身を起こして 「僕の、バッグ。中に……クリームある、から」 「おまえ、持ってるのか?」 「……ぅん」

ともだちにシェアしよう!