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星を渡る月舟6※

振り向いた樹の目は涙に濡れていた。薫ははっとして眉をひそめ 「樹。辛いのか?」 気遣わしげな薫の問いかけに、樹は慌てたように首を振る。 「違う。つらく、ない。気持ち、いぃ」 「そうか」 薫はほっとして微笑むと 「抱っこしてやる。おいで」 樹はおずおずと頷くと、両手を突っ張らせて身を起こした。その両脇に手を入れて、細い身体を抱き起こす。 シーツに尻をつき、樹を後ろ向きに抱っこの体勢になった。繋がったままの中がぐりっと動いて、樹はぷるぷる震えて喘ぎ声をあげる。 「大丈夫か?」 抱き締めた樹の顔を横から覗き込む。涙の雫をくっつけた彼の長い睫毛が、ふるふるしていた。 「だいじょぶ」 そう言って健気に微笑む樹が、愛しくて堪らない。薫はその頬にちゅっと音をたててキスすると 「身体の力を抜いて、寄りかかってごらん」 優しく耳元に囁いた。樹はちょっと戸惑ったような顔をして 「に、さん。重く、ない?」 不安そうに尋ねてくる。 「重くないさ。おまえは軽すぎるくらいだ」 薫が笑いながら答えても、樹はまだ不安そうな顔のままだ。 「もう……動かない、の? おしまい?」 「なんだ。この格好だと不満か? 気持ちよくないか?」 「違う。そうじゃ、ないけど……。これだと、にいさん、気持ちよく、ないでしょ?」 何故かすごく哀しそうな顔になる。声まで泣きそうだ。 「気持ちいいよ。おまえ、どうして泣きそうだよ?」 「だって……」 「さっきの格好だと、おまえ疲れるだろう? 大丈夫だ。こういうの、にいさん1度やってみたかったんだ」 「そう、なの?」 樹は驚いたように目を見張った。薫は笑いながら頷いて 「樹。あっち、見てみろよ」 薫が指差す方を見て、樹が小さな声をあげた。 「映ってるだろう? 鏡に」 部屋の奥の姿見に、2人の姿が映っている。樹はじたばたして、しどけなく開いた脚を閉じようともがいた。 「こら。じっとしてろ」 「や……だって」 「見たいんだ。おまえのこと。ちゃんと見せてくれよ」 薫の言葉に樹はぴたっと動きを止めた。薫は両腕で細腰をぎゅっと抱くと、樹の横に自分の顔を並べてみた。 「可愛いよ、樹。にいさん、おまえが可愛くて仕方ない」 樹は恥ずかしそうに耳まで赤くなり、ぱちぱちと瞬きをした。 「おまえの中に、今、にいさんが入ってる。おまえとひとつになってるんだ。わかるか?」 「……ぅん」 樹はきゅっと目を細めた。 「ありがとうな。最初、すごく苦しかっただろう。おまえのここ、狭いからな」 そう言って、薫が下からゆるゆると腰を揺らすと、樹は感じ入った顔になり、あん……っと鳴いた。 「俺のを受け入れてくれて、ありがとうな、樹。おまえの中、温かくてすごく、気持ちいいぞ」 薫が囁いて、樹の耳たぶをはみはみすると、樹の目尻からまた新たな涙が零れた。 「にいさん……好き……」 「俺も、大好きだよ、樹」 (……どうしよう……僕……幸せ過ぎて……死んじゃいそう……) 薫が急に動きを止め、身体を起こせ、抱っこしてやる、と言い出した。 もしかしたら、あまり気持ちよくなかったのかもしれないと、樹は途端に不安になった。 義兄は女性の恋人がいた人だ。元カノの冴香さんと、きっとこういうことをしていたわけで。男の自分の身体では、やっぱりダメだったのかもしれない。そう思うだけで、泣きそうだった。 それなのに……。 義兄は言ってくれたのだ。 おまえが可愛いと。ひとつになっていると。 受け入れてくれてありがとうと。 そして、おまえの中は温かくてすごく気持ちいいと、言ってくれたのだ。 (……にいさん、好き。大好き)

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