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星を渡る月舟7※
隙間なくぴたりと身体を重ね合わせた樹を、後ろから抱っこしたまま、薫はゆらゆらと腰を揺らしていた。
密着した肌の熱が心地いい。
自分を受け入れてくれている樹の中が、時折きゅうきゅうと締め付けてきて、甘く蕩ける快感がずっと持続していた。
幼い樹とこんな関係になってしまうことに、恐ろしさと不安を感じていた。けれど、今、こうしてひとつになれたことに、後悔はなかった。
樹を愛しいと想う自分の心に、もう迷いはない。むしろ、愛おしさは抱く前より強くなっている。
思えば、アパートでの再会の時から、自分の心は樹に捕えられていたのだ。
血の繋がらない歳の離れた義弟に急速に親しみを感じて、気にかかって仕方なかったのは、兄としての責任感だけではなかった。
樹が訪ねてきてくれるのを、自分はいつも心待ちにしていた。会う度に、樹の存在は自分の中で大きくふくらんでいった。
常識だとかモラルだとか、そういうものに強く囚われていたから、無理矢理に思い込もうとしていたが、樹に対して感じるこの胸のときめきは、肉親への愛情とは別のものだったのだ。
初めから、恋だった。
そのことが、こうして恐れながら身体を重ねてみて、ようやくわかった。
世間的には、自分たちのこんな関係は、決して許されることはないだろう。だが、誰にどう責められようと、樹を愛することは止められない。これが罪だと言うのなら、咎は自分が引き受ける。責任は全て、自分が負う。
今はまだ学生の身分だが、自分の夢を叶える為にこれまで以上に努力しよう。その夢の先に、樹を自分の力で幸せにしてやれる未来がある。
そう考えれば、これまで漠然と考えていた将来に、確たる目標が見えてくる。
自分は今、浮かれているのだろうか。
でも、決して浮ついてはいない。
樹に対して感じているこの責任の重さは、これから先、きっと自分の力になるだろう。
樹が自分の上で揺れながら、細くて甘い吐息を漏らす。薫は、両手で樹のほっそりとした脚をすくい上げて、腰の動きを大きくした。
「……樹……どうだ? 気持ち、いいか?」
「に……ぃさん……んぅ……っもち、いぃ……」
「俺も、だ。おまえの中は、すごく、いいよ」
「……っんぁ……んぅ……っふ……ん……ん……」
樹の中が、びくびく震える。仰け反って、頭を預けてくる樹の声が大きくなる。
揺れる波の上で、今2人は繋がり合い、同じ歓びを目指して混じり重なり揺れている。
身体だけでなく心も溶け合い、満たされている。樹の心が自分の中に流れ込んでくる。自分の心も樹の中に流れ込んでいく。
……樹……愛しているよ。俺の……俺だけの小さな恋人。
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