226 / 448

見えない光4※

……ああ……僕の中の……にいさんが……消えていっちゃうんだ……。 樹は、明るすぎるほどの照明の下で、自分の身体をねっとりと這い回る叔父の指を感じながら、ぼんやりと宙を見つめていた。 しつこく嬲られた口からは、既に薫との甘やかな口づけの記憶を根こそぎ奪われた。そして叔父の口から注ぎ込まれた毒は、身体の表面だけでなく中も、そして心をも穢していった。 「俺が触れたら、全部綺麗になる」 そう優しく慰めてくれた薫の言葉は、まるで両刃の剣のように、樹の心をズタズタに傷つけていた。 薫にはもう会えない自分は、この先汚れていくだけで、綺麗になることはないのだ。 目の奥が熱くなる。じわじわ滲み出し少しずつ集まった雫が、哀しみに耐えきれずにポロリ……と落ちた。 「樹。身体の力を抜きなさい。もっと尻を突き出すんだ」 縛められて身動きが不自由な樹を、巧が興奮を隠しきれない声で叱咤する。樹は怯えきった顔で頷くと、巧の指示通りに小さな尻を掲げた。 「颯士。支えてやれ」 ぎこちない樹の動きに、巧が少し苛立った声をあげた。 月城は素早く樹の前に回ると、床に這いつくばりそうになっていた身体をそっと引き起こす。 全身を巧の指で撫で回されている間、樹はまるで血の涙を流しているように見えた。はらはらと零れ落ちる涙は、はっとするほど美しいのに、その目に宿る哀しみの色があまりにも痛々しい。 時折ぎこちなく動く樹の唇は、間違いなく「にいさん」と言っていた。 決して声には出さなかったけれど。 月城が樹の上半身を膝の上に抱き起こすと、樹は涙に濡れた虚ろな目でこちらを見上げた。 「苦しくないかい?」 樹は、こく……っと頷いて、ちょっとほっとしたように膝にもたれかかってきた。 苦しくないはずはない。こんな無理な体勢で、巧の指を後ろに受け入れているのだから。 「……ぁ……っく……ぅう……っ」 強ばっていた身体が弛緩して、後ろが柔らかくほぐれたのだろう。巧の指の動きが激しさを増した。樹は歯を食いしばることも出来ずに、身体の奥底から絞り出すような呻きを漏らしている。 「いい子だな、樹。その調子だぞ。おまえの中はキツいが、私の指をしゃぶるのが上手いな。うん、いいぞ」 巧の声はひどく嬉しげで、興奮に掠れていた。ふと目をやると、その証の昂りが、グロテスクなほど大きくなり鎌首をもたげていた。樹の全身をじわじわと指で嬲るうちに、普段以上に煽られてしまったらしい。 樹の怯えきった反応は、彼にとっては最高のご馳走なのだ。生け贄が竦み上がり嫌がって泣けばそれだけ、彼の支配欲と嗜虐心を満たす。 ……酷い男だ……。 月城は欲情に目をギラつかせる巧の顔を、ちらっと見て目を伏せた。

ともだちにシェアしよう!