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見えない光5※

「あっあう……っあん 、ああっんぅ」 自分の膝の上で樹が喘ぐ。後ろを開かされ始めた時の苦しげな声ではない。巧が道具箱から取り出して後ろに直接押し込んだ媚薬の効果が、現れ始めているのだろう。 この陰残な儀式に、ただ1つ救いがあるとすれば、それは巧が薬を使うことだ。容易には受け止められない屈辱と恐怖と苦痛を、あの小さな錠剤は和らげてくれる。嫌がる心は救えないが、身体の方は抵抗を諦めて慣らされていく。 「樹。どうだ、これは? 気持ちいいか?」 巧は暗い欲情に酔いしれた目をして、樹の身体に用意していた様々な道具を試し続けていた。樹は強制的に昂らされた身体を妖しくくねらせ、艶やかに喘ぎながら時折びくびくと痙攣している。 「ああん……っんぅう……っ」 浴室に2人の荒い息遣いと樹の媚声が満ちていく。月城は息を殺して2人の様子を見守っていた。 これまでも、巧が樹を無理やり抱く現場に立ち合わされている。だが今日の巧はしつこかった。ディルドで奥を責め立てながら、樹の朱を散らした滑らかな肌に、むしゃぶりついて、舐め回し、感極まって歯をたてる。薬でどろどろに蕩かされた樹は、もう完全に正気を失っている。巧が与える快感に身悶え、まるで自ら欲しがるように尻を揺らして、妖しい媚態を晒していた。 「よし。……っそろそろ、いいだろう」 巧ははあはあと荒い息を撒き散らしながら、樹の身体から玩具を抜き取り、代わりに自分の楔にゴムをつけた。その上からたっぷりとローションを垂らすと、反り返るほど勃ちあがったそれを、樹の窄まりに宛てがう。 巧はようやく、月城の方に視線を向けてきた。興奮しきった目をじわりと細めて、酷薄な笑みを浮かべた。 「妬けるか? 颯士」 「……っ」 自分はどんな顔をしていたのだろう。巧の満足気な言葉にハッとなる。樹を痛ましく思い、巧の仕打ちに嫌悪を感じていたはずの自分が、無意識に浮かべていたのは……そんなにもあからさまな妬心なのか。 「これが終わったら、おまえのこともたっぷり可愛がってやる。だから拗ねるな」 巧に見透かされたのがショックで、月城はそっと目を伏せ視線を逸らした。心臓が嫌な感じにドキドキしていた。したり顔の巧の笑顔が悔しかった。そんなことはないと、反論してやりたい。何よりも、不誠実で残酷な恋人の言葉に、こんなにも動揺してしまう自分が泣きたいほど悔しい。 樹の身体が強ばった。ぐちゅり……と水音がする。巧の切っ先が小さな窄まりを割り開いたのだ。 「……っくぅ……っ」 月城はままならない自分の感情を持て余しながら、樹の柔らかい髪の毛をそっと撫でた。

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