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ハロウィンコスイチャ 1 悪代官、鬼には勝てず

「一生のお願いです! どうか! どうか! どうかあああ」  山下、号泣……は、してないけど、そんな必死の顔すんなよ。すげぇ。 「えー……やだよ、めんどくせぇ」 「そこをどうかあああ」  俺はどこぞの悪代官様かよ。それなら街娘連れて来いよ。初心そうな顔して、実はスケベで、肌とか真っ白キメの整った潤い肌に、何それって呟きたくなるくらいの可愛いピンクの頬をしたパイパンの鬼課長とかさ。あ、でも、いいんじゃね? ちょうど。 「何を騒いでいるんだ。廊下まで響いてるぞ」 「あ、課長」 「課長っ!」 「どうしたんだっ? 山下」  山下が縋り泣きのテンションのまま、鬼の足元にも擦り寄った。こいつ、要に泣きつけば俺が言うことをきくとでも思ってんだろ。そんな思い通りになんてなってやるかっつうの。それに要だって、そんなん断れって言うに決まってる。なんで、俺が、山下と。 「庄司先輩にコスプレ頼んだんです」 「は? コス……プ」 「今度ある高級ホテル主催のハロウィンコスプレコンテストに一緒に出てくださいって。俺、幼馴染にお願いしたんですけど、そいつ、急性盲腸でっ、入院しちゃってっ、ダチは皆その日はどっかのイベントで盛り上がってるし、もう相方なしで、ぼっち参加とかそんな勇気はさすがにないし」 「そう言われてもなぁ。いかんせん。急すぎるだろ? 今週末だなんて」 「だから、泣きついてるんじゃないですかぁぁっ……ぁ……あ」  こいつ、営業先でもこんなふうに泣きついてたりして。指導したのが要だから、まぁ、それはないだろうけど。普段ぽわーっと、ふわーっとしてそうだけど、要に相当叩き込まれてるから、営業マンとしては優秀だと思う。 「お願いしますだぁぁ……ぁ……」  たぶん、優秀だと……思う、けど、どうだろ。 「あのな、山下、庄司にも用事っていうのがあるんだ」  そうそう。今週末は要と秋冬仕様に部屋を模様変えしようって予定を組んでんだ。ラグを毛の長い冬用のに変えて、ふわふわ柔らかいクリーニングしたてのそのラグの上で裸に剥いた要を組み強いて。  ――あぁっンっ、高雄っ。 「あぁぁぁ!」  おい、俺の楽しい妄想にお前の悲痛な叫びを重ねるなよ。山下、お前の悲鳴で色っぽい要が吹き飛ぶだろうが。 「あいつとだったら賞金狙えたかもしれないのにぃ……そのコンテスト主催のホテルでディナーアンド宿泊セットがぁ」 「泣かれてもなぁ」  泣かせるなら断然要にお願いしたいし、っつうか、その賞金、どう考えたって山分けできねぇだろうが。それにお前、その賞金を幼馴染とどう分けようって思ってたんだよ。お前のプライベートとかさして興味ねぇけど、幼馴染と高級ホテルのディナーと宿泊、いるか? あ、でも、お前、食いしん坊だもんな。この前も、わんこそば食いに行ってきたって写真見せてくれたけど、ゾッとするほどの碗タワーの中で満面の笑みだったもんな。来年の健康診断大丈夫か? 健康というのはクドクドクドって要に小言言われてたもんな。そのちょっと後におやつだっつって、チョコ食ってたけど。 「ディッ……ナー……」 「山下……」  しゃくれ上げすぎるだろ。悪いな。俺は高級ディッ、ナー、よりももっと美味いごちそうを。 「軍服コス、すっげぇ高かったのにぃ……」 「軍?」 「はひ。軍服の。すっごいクオリティ高いやつ、お値段も高いけど、これで高級ディナーをって思えば」 「軍っ!」  あ、あれもしとかないとだよな。エアコンのフィルターとか一番にやっておかないと。 「よし。引き受けよう」 「へ?」  裸に剥いた要が風邪を引いたりしたら大変だから。 「ホテル名を教えろ。あと日時。私が責任を持って送り届ける」 「ひええええええ?」 「ちょ、おいっ、要」  思わず普段、うちで呼んでる感じで名前を呼んじまうほど慌てて、引き止めようと手を伸ばす。は? なんだって? 引き受けるっつったか? コスプレコンテスト? 「高雄! 今週末はコスプレコンテスト! だぞっ!」 「かちょおおおおお!」 「ちょっ」  ニカッ! って笑ってる場合じゃないだろ! なんで、あんたがノリノリになってんだ! 「…………おいっ!」 「頑張ろう、なっ!」  何を、本当にこの人は、急に目を輝かせてんだ。全く。 「ったく、仕方ねぇな」  クソ可愛いだろうが。 「あのなぁ、部屋の模様替えはどうすんだよ」 「それは……うーん、来週、かな」  濡れた髪の先端からポタリと零れた雫が、蒸気して色づく頬を伝い,、乳白色の湯の中に落っこちて馴染んで消えた。 「んっ……」  みずみずしい頬にキスをして、少しだけ舐めてみれば、味なんてしないはずの白い肌からたしかに甘みが舌に滲む。 「仕事の納期には厳しいくせに」 「それはっ! そうだろうがっ! っン、……ぁん」 「模様替えは延期?」  俺の膝の上に跨った要の、ひとりでに硬く育った乳首を摘めば、バスルームのタイルに可愛い声が響き渡る。昼間、職場では厳しく凛とした響きのある声が、俺の指先一つで糖度が濃くなり、蜜みたいにトロリと蕩ける。 「だって、見た、いっ……ぁ、ン、高雄っ」 「俺の軍服姿?」 「ん、見たい、すごく」 「ふーん」  鬼課長って呼ばれてるこの美人の欲情に濡れた瞳にゾクリと滾った。 「あっ……ン、や、ィっちゃう」  見えない湯の中、握り締めて扱いてやれば、気持ち良さそうに掌の中でイこうと腰を揺らすのがまたエロくて最高にやらしい。 「あっ、あっ」 「要」 「ぁ、ン、ん」  肩も胸も、下腹部も、ほら、興奮して桜色に変わっていく。 「高雄っ」  湯の縁に手を置いて、派手な水音を立てて腰を上げる。乳白色で隠れてた下腹部よりももう少し下、毛の生えていない肌からツーッと伝い落ちる白い湯にすら煽られる。 「あンっ」  湯で火照った肌に歯を立てて、そそり立ったピンク色のペニスにキスをしてやると、もう、限界だ。 「ぁ……ン、お願い、高雄」  身体を開いて、大胆に、課長らしからぬお行儀の悪さで、片足を浴槽の縁に乗せ、切なげに腹を撫でる。 「……何?」 「高雄の」  最高に淫らな孔を見せ付けて。 「ここに……欲し」  俺も、あんたも、早く繋がりたくて齧り付くように、相手の口の中をキスで貪り合った。

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