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ハロウィンコスイチャ 5 ささやかなご馳走を貴方へ
足元には光の粒をぶちまけたみたいにキラキラとした夜景。誰にもこの人の、この痴態は見せてなんかやらないけど、見せびらかしたいとも思う。
あの、真面目で仕事にストイックで、そして優秀な花織課長のこんな姿。
「あっ……ぁっ」
「要……」
「んんっ」
耳元で名前を呼んだだけで、切なげに孔の口を締め付け、ペニスにきつくしゃぶりつくやらしい身体。
「さっき、イかなかったっけ?」
「あっ、ンっ」
ペニスで刺し貫いただけで、雲りひとつないガラスを白濁で汚す、はしたない身体。
「あっ……ダメ、今、乳首、抓ったら」
さっき自分でやってわかってるだろ? ここ。
「あ、ああああっン、それっ、ン、高雄」
こうして、強くいじめると、あんたの中がすげぇ俺を気持ち良く甘やかしてくれる。搾り取られそうで、歯を食いしばって堪えてないと、すぐに暴発しそうになるんだ。
今だって、かなり――。
「あ、ン、高雄」
「?」
「高雄の、欲しかった。これ、に、意地悪され、たかった……ン、ぁ、だから、奥まで、この硬い、ので、ちゃんと、身体検査、ぁ、あああああっン」
だから、かなり我慢してるつうのに、あんたはどうしてこう、煽るかな。まだ、そんなに囚人設定で俺にいじめられたい? 激しく犯されて、征服されたい?
「あ、あっン、激し、の、またっ……イちゃうっ、出ちゃうっ」
頭の芯が蕩けて溶けて、ヤバい。
「あっはぁっ……ン、ぁ、やぁっ、そこ、ズンズン、してっぁ」
甘いおねだり、甘い悲鳴に煽られて、極上の感触の内側に食われる快感。なんも考えられなくなる。
要の白い指がガラスの窓にしがみつくように力を込めて、その爪が真っ白になった。なのに指先は興奮で火照って赤くて、貝殻みたいに色づいてる。綺麗で、愛しくて、その手に手を重ねた。
「やぁぁっン、これ、気持ち、イイっの、来ちゃう、からっ」
重ねて、逃げられないようにガラスと身体で挟んで、激しく突き上げる。爪先立ちの不安定さも関係ないくらいに窓ガラスに押し付ければ、熱くなった身体はガラスの冷たさに身を縮めた。そんで、俺が追い詰められる。
「っ、要」
「やぁ……ン、高雄の声、イっちゃう」
ガツガツと、この細い腰に指を食い込ませて攻め立てて、しゃぶりついてくる要の内側を何度も何度も掻き乱して、抉じ開けて、奥まで暴いて。
「あ、あぁ、あっ」
この人のこんな奥まで全部、俺の――。
「高雄、中に、いっぱい……ン、ぁ、出してくれ」
全部、俺のだって、ガラスの向こうにばら撒かれた光の粒に見せびらかした。
「いやあああ、すっごい美味かったです! 最高だった! あ、テレビに引っ張りだこのシェフが挨拶までしに来てくれたんすよ!」
「へぇ」
あの新兵感がすごかったコスプレのまんまで食事って、けっこうシュールだって思ったけど。右隣がゾンビで、左怒鳴りがミイラだったってきいて、山下が多分一番まともだったと判断した。まぁ、少しだけ、中学生がスパークリングワインを飲んでるような違和感のある光景だったかもしれないが。
「つうか、ミイラってどうやって飯食うの?」
「あ、こうしてぇ、包帯と包帯の間を少し広げて食べてました。パン食べづらかったみたいで、押し潰して食べてましたよー」
棚からぼた餅で、高級ディナーにありつけた荒井がやってみせてくれたけど、その食い方、パンの美味さ台無しなんじゃね?
「あ! スープも大変そうだったぁ。付いちゃうから」
そう言って、今年の秋の新色って女性スタッフと話していた色の唇を指差している。
「んで、先輩たちはどうだったんですか? スウイイイイトルーム」
「まぁ、それは……」
そこで顔をあげ、自分のデスクにいる花織課長を見た。眉間に皺を寄せ、難しい顔で何かを凝視している。
今日もストイックに仕事してんな。資料でもチェックしてるのか? 来週、新規顧客との打ち合わせがあるって言ってたな。俺はその来週にどうしても外せない出張が一泊二日で入ってて、同行できず。先輩が担当するって言ってたっけ。
それにしても、珍しいな。昼休憩は「休憩しなければいけない時間なんだぞ」って、普段なら時間守って食事にするくせに。
「花織課長、もう昼……」
そう声をかけた瞬間、大慌てでパソコンの陰に隠れた。
「あ?」
何してんだ、あの人。
立ち上がり、革靴のかかとを鳴らして近づけば、ガタガタとでかい音を立てて何かを隠そうとした。
「要?」
残念。俺の長い脚のほうが早かったな。隠してしまう前に手首を掴んで没収した。
「こっ、こら! 返さないか!」
「……」
「ちょ! お、おい!」
「……何、これ」
「か、返すんだ!」
ジャンプして奪おうとする上司の上空へ手をかざし、手に持っている写真にしかめっ面をした。これ、あんたの嫌いなゾンビと吸血鬼とお化けだけど?
「?」
「返せー!」
「……ぁ」
目を凝らしてようやく見つけた。
「あんたね……」
「さ、さっき、山下からもらったんだ! 貴重な一枚なんだぞ!」
そこにはイライラしてますって顔をした軍服姿の俺がいた。
「ら、来週、お前が出張でいないから、その間の、その」
いや、たったの一泊二日だけど?
「その」
(何? こんな小さいのをおかずにしょうと思ってた?)
営業部公認、もう皆が知っているし、今、昼休憩の業務時間外。プライベートな話をしたって、厳しい鬼の花織課長ご自身がこの赤面なんだし。誰も咎めやしないけど。けどさ――。
「う、うん」
そう頬を赤らめて答えるのは、反則だろ?
「高雄? 頭痛いのか?」
「あぁ……まぁな」
「大丈夫か?」
あんたは丸ごと反則だ。可愛くて、綺麗で、ストイックで、そのくせ、どこまでもエロい。
「高雄、食欲は?」
あるさ、大有りだ。いつだってエロくて可愛いあんたの中を貪りたくて仕方がないんだから。
意地悪をされたい? 恋人に征服されたい? 俺はいつでも、あんたに意地悪をされてるし、あんたに丸ごと征服されてる。だから、そうだな。
「来週、もっといいご馳走をやるよ」
「?」
夜のオカズ、そんな小さな俺の写真なんかじゃなくて、もっと美味いのを、すぐにイけちゃうくらいのを遥か遠くの出張先からあんたにご馳走してやる。
「だから、楽しみにしてて? 花織課長?」
いつもしてくれる意地悪へのささやかな俺のお返しだ。
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