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雨の日イチャイチャ編 3 これは無理案件
ずぶ濡れ、濡れ鼠、びしょ濡れ、靴の中なんてもうちょっとしたプール状態。こんなんフツーすげぇ気持ち悪いだろ。うわぁ、最悪って呟くだろ。けど――。
最高だ。
「ちょ、ちょっと待ってろ。今、タオルを持って来てやるから。その、風邪を引かせてしまったら大変だからな」
「……」
「あぁ、すごいびしょ濡れだ。でも、後で廊下は俺が拭くから気にしないていい。でもでもちょっと待ってろ」
ヤバイ。
「タオル、タオル。アハハ、掃除さっきしたのに、またするようかもな」
来た。すげぇの来たわ。
「バスタオル、バスタオルっと」
これは無理案件。
「今、拭いてやるから」
「……要」
「っ」
抱き潰しちゃダメ、とか無理な案件だ。
「すげぇ、顔真っ赤」
「っ、だって」
ぱいぱんがコンプレックスじゃない? 気にしてはいるけれど、俺が? 綺麗だって、気に入ってるって言ったから? だから気にしてない?
そんで? 俺の裸を守るんだっけ?
社員旅行、ぱいぱんなことを気にはしてないけれどバレたいわけじゃない。見せびらかしたいわけでもない。いや、見せびらかされたら俺が発狂するけど。
だから、入浴は自室にある小さなシャワーで充分だ。でも、俺までそれをさせるの可哀想だ。せっかくの温泉社員旅行で、課長自ら企画した卓球大会に肝試し。少し小学生っぽいけど、要考案って時点で萌えが沸点超えるし。
そんで、ゆっくり絶景露天風呂を味合わせてやりたい。光のオブジェが綺麗なロココ調の格調高い露天があると言っていたから、楽しませてやりたい。あまりに悩みすぎて、そのうち付け髭のモジャモジャをそこにつけたらパイパンなことがバレずに済むのではないだろうかと思い至ったくらい。そしてそのまま寝付いてしまったため、夢の中でももじゃもじゃで、モジャモジャになったーと喜んで風邪を引いて、商談が危くなるという夢を見るくらい。モジャモジャに悩んでたんだ――とかさ。
はぁぁぁ? って、問いただすぞ、マジで。
「濡れそぼった高雄がカッコよくて、ドキドキする」
マジで可愛いすぎるだろ。ぱいぱん連呼しすぎだろ。本当に、あんたは。
「なんで、そんなにカッコいいんだ」
人の胸板を指で突付くな。
「そもそもそんなにカッコいいから、いけないんだろう? どうする? お前の裸に山下が急にメロメロにでもなったら」
「要、そこで、俺の萌えを踏み潰すなよ」
山下のやろう、邪魔すんなよ。
「も、もしかしたら、今頃になってお前の魅力に」
「先輩のこととかぜええええったいに今、口に出すなよ!」
「ど、どうしてわかったんだ!」
失神するっつうの。
「いや……ねぇよ。普通に考えてそれはないから」
「わからないだろっ」
「あっても……いや、絶対にない。ないし、無理、絶対に無理。拒否だ」
あんたのほうがよっぽど危ないだろうが。こんな――。
「とにかく、ねぇよ」
「……高雄」
「俺が要に夢中だって、知ってるだろ?」
「……」
こんなに濡れて、そのほっそりとした顎のラインを着飾るように伝うのは宝石ですか?
「つか、要はぱいぱんでももじゃもじゃでも、部屋風呂だ」
「ぁ、ン……高雄、ぁ、ダメ」
濡れて、身体のライン丸見えなんですけど? 何このエロすぎる腰のラインに、うっすい胸に、あと。
「あぁぁっン」
「勃ってる」
あと、これ、何?
「乳首」
「ぁ、違うっ、今、コリコリになったんだ」
はぁ?
「さっきまで普通だった。今、っ高雄見た、から」
「……」
「乳首が、コリコリになっちゃったんだ」
ちゅどーん、って音しそうなくらい、頭の中が大爆発した感じ。
「ぁ……ン」
「怒ってねぇの?」
「な、んで?」
今、ここで言うのもズルいし、ダサいし、タイミングとか全然なってねぇけど。
「さっきの、さ」
「コンプレックスのことか?」
要がそっととても清らかなキスを一つした。可愛がるように、優しく、丁寧に。
「だって、高雄が好きって言ってくれただろう?」
好きだよ。すげぇ、好き。綺麗だって、本気で思う。
「……好き?」
「あぁ」
首を傾げて、自分から濡れて肌に貼りついた服を捲くり上げ、ズボンを下げる。自分で見せていることに気恥ずかしそうに、頬を赤く染めながら俯いて、きっとこの人はまた可愛いことを呟くんだろう。
「う、自惚れ、かもしれないが」
「……」
「俺がぱいぱんでも、も、もじゃもじゃでも、好きでいてくれると思う、んだ」
指先まで真っ赤にしながら、俺に可愛がられたいと見つめ合っただけでコリコリにした乳首を見せつけながら。
「俺はつるつるでももじゃもじゃでも、どんなでも、高雄が、好きだぞ」
「……」
「カッコいいし。カッコよくなくても、きっとカッコいいと思う。すごく好きだから」
ほら、やっぱ可愛かった。
「っぷ、すげぇ意味不明になってるけど」
「わ、笑い事じゃないんだぞっ」
「あぁ、わかってる」
分かってないから笑うんだろうって怒るか?
「悪かったって、かなっ、んぶっ」
激突した。口と口が激突した。顔を固定されて、正面衝突だ。鼻がぶつかるし、唇痛いし。けど。
「本当に、すごく大好きなんだっ」
「……」
「だからっ」
「俺もだよ」
あぁ、本当に愛しいな。
「だからさ……」
床じゃ、あんたの白くて華奢な背中がかわいそうだ。かといっ、濡れ鼠じゃベッドはアウト。それなら。
「したい、高雄」
「……」
「あの、ラグ」
もう今日何回目だろう。
「ラグはどうだ? その……丸洗いできるし。も、申し訳ないんだが」
「?」
「最速、もう、イってしまいそう、なんだ」
あんたの斜め上な発言に萌え殺されそうになるのは。
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