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雨の日イチャイチャ編 5 まさかの!脱パイ○ン

 ラグ、丸洗いできるけどさ、でも雨土砂降りの日じゃ、洗っても干すところがないよな、って二人して笑った。 「毛の悩みっていうのはとても深刻なんだぞ」 「あぁ、そうだな」 「わかってるのか?」 「あぁ、わかってる」  バスタブになった気分だ。ふわりと立ち込める湯気の中、俺に遠慮なく寄りかかる上司の細い肩を眺めてた。ほっせぇ肩。そんでその白い肩にひとつふたつ赤い印が残ってる。俺がつけた痕。 「ン、あったかい」  ただそのキスマークが散らばった肩に手で掬い上げたお湯をかけただけで、甘い声をあげるくらいに敏感な要が、「毛」について真面目に語ってた。 「毛っていうのはだな」  可愛いよな。 「あぁ、知ってる。ほぼほぼケラチンタンパク質なんだろ?」 「! なんで、知ってるんだ! すごいな! 高雄っ」  嬉しそうに声を上げて、お湯を派手に波立たせながら、要がバスタブになった俺へと振り返った。  なんで知ってるんだって、あんたが寝言で言ってたんだろ? 唸りながら、真面目な感じにしっかりと、寝言とは思えない口調でそう言ってたんじゃん。 「そろそろ出るか」 「あ、うん」  頬が真っ赤だ。あんま浸かりすぎるとのぼせる。 「肩がポカポカだ……」 「……あぁ」  それから、また、ほらグググッとクルものがあったから。さすがに昨日の今日でもう散々抱いた後でのそれは、性欲強すぎるだろ。本当に抱き潰すわけにはいかないからな。大事なミーティングだってあるし。あ、そうだ。顧客んとこ一件値下げ交渉のどうすっか要に相談したかったんだ。まぁ、明日、職場でいいんだけどさ。  それに、温泉社員旅行が控えてるし。  そっか、そしたら、そろそろキスマークは厳禁だよな。消えないだろ。  でも、ぱいぱんだろうが、モジャモジャだろうが、要は露天禁止だけど。普通に誰にも見せられない。この人のこの肩とか、モザイク処理が自動でさ、人の視界にやれないもんかな。 「高雄?」 「……あぁ」  湯を上がると、要の艶肌からポタリポタリと湯が滴った。指の先から滴るのとかマジ飲みてぇ。髪、肘、それに脚の……。 「高雄? どうかしたか?」 「……なんでもない。つうか、早く拭けよ。風邪引くぞ」 「……ん」  ただそれだけなのにそそるって、どんなだよ。そんで、あの鬼の課長が実はけっこう甘えたがりで、二人で風呂に入った時は必ず頭を拭いてくれとせがむんで俯くとか、どんだけ、可愛いんだ。 「あ、そうだ……高雄」 「んー」  何かと思った。 「えへへ」  服をとりあえずあんたには着せないとって思ったところで、いきなり股間をくっ付けるから。  ぴったりとくっついた股間。それを見て恥ずかしそうに照れ笑いをする俺の上司。 「じゃじゃーん。ほら、俺の股間に陰毛が生えたぞ! ぱいぱんじゃないんだぞ!」 「……」  ぱーん。  そう、たしかに音がした。頭の中で何かが弾けた音。  そりゃ、仕方がない。だって、美人でエロくてツンが鬼レベルの課長が股間擦り付けて、人の陰毛でバカ可愛いことを言ってのけるんだから。 「な、なんちゃってな。あはは、いや、その、お前が、俺のしたいこと、されたいことを言ってっていうから」 「無理」 「ひゃ?」 「マジ無理」 「え? ぁ?」  引く? 引くわけねぇじゃん。なにその可愛いの。 「ぁ、あっ、待っ、嘘、無理、だっ、も、出ないっ」 「俺もマジ無理だ」 「む、リっ出ない、もう、精液、出ない」 「俺も我慢してたけど無理だから」  二人で無理の言い合いをしながら、湯冷めそっちのけでバスルームの鏡の前で兜合わせ。 「ぁ、ひゃぁン」 「要」  エッロ。  ほら、要も見てみろよ。 「ぁ、高雄……」  向かい合わせで、股間くっつけて、俺の手で二本のペニスを扱く。要はキスマークをくっつけた肩を小さく丸めながら、喘いでた。俯いて、腰だけ自分でも擦り付けて。 「あン、高雄」 「?」 「もじゃもじゃでも、好き?」 「!」 「ぁ、ぁっ、も、またっ」  無理じゃねぇよ。  「あ、高雄っ、たかおっ」  ほらな? ちっとも無理じゃなかっただろ?  気がつけば雨は上がっていた。夜空には満天の星。 「なぁ、要」 「んー……」  眠い? よな、さすがに。 「やっぱ、俺らもさ、喧嘩とかいつかするんだろうな」 「……」  いやだなって思った。できることならしたくないなって。 「んー……」  今までは誰かと喧嘩をしても面倒くせぇで終わってたんだ。流して、向こうの機嫌が直るまでそのままだったり、とりあえずごめんって言ったり。 「高雄と、喧嘩、したら……」  眠そうな声だ。 「仲直り、すればいい……」 「……」 「高雄のこと、好き、なの、変わらない、から」  眠気で手が温かかった。しっとりと俺の胸に重なる掌が温かくて、切なく、けれど溢れるほどの幸せを感じる。 「あぁ、たしかに、そう、だな」  愛しい人を腕に抱きながら、カーテンの隙間を見つめると、空にはキラキラ輝く星が散りばめられていた。

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