115 / 140
課長初めての◯◯編 5 あんあん、あん
週明け、出社したら要の噂を耳にするんだろうな。あの鬼課長は仕事もできるけど、歌も上手かったって。少し印象が違ってたとか、言われたりしそうだ。
「っ……高雄っ、もっ、待ちきれないっ」
見てみたい……とかな。
「高雄っ」
低い声は歌の時だけ艶を増した気がした。甘く優しくて、柔らかい歌声は普段のあの課長のイメージとはそぐわないとか。要の素の部分が垣間見られた。
「高雄っ、っ」
スリムタイプのスーツに身を包んだストイックな仕事中の花織課長じゃなくて。不器用で真っ直ぐで、柔らかい要が。
「なんで、いじわるっ」
「いじわるじゃねぇよ、スーツ、皺になるだろうが」
ジャケットだけとりあえず脱がせて、玄関先の廊下に落っことすと、焦らされたと思ったのか、要が切なげな顔をした。
酔っ払って、理性はトロトロに蕩けて、流れて、甘やかな声が止まらない。いじわる、してもいいんなら、思いっきりしてやろうか?
あの課長がスーツ姿のまま欲しがって、シャツをくしゃくしゃに乱しながら、舌を伸ばしてキスをせがんでもあげないで、焦らして焦らして。
「大好きだ、高雄っ」
「どーしたの? 今日はなんか、ずいぶん」
「だって、だって」
その言い方可愛くて反則。
「高雄ぉ……のっ」
ほっそい腰をすり寄せて、ほっそい腕で首にしがみ付いて、舌にしゃぶりつく乱れた感じとかももちろん、反則。
「歌、カッコよくて、ゾクゾク、したっ」
歌に興奮するとか、そういうのもさ。
「ぁ、触って……欲し」
スラックスの中を想像するだけで喉が鳴る俺を煽るの、やめてくんない? まだ玄関先なのにこのまましたくなるじゃん。
「要」
「ンっ、ぁっ……すごい」
抱え上げると、ぎゅっとしがみついた。だって、こんなに細いんだ。背中なんて簡単に痛めるだろ。だから、ここじゃなくてベッドまで抱き上げて連れて行くと、酔っ払いの要かちょーは嬉しそうにしがみ付いた耳元で笑うんだ。
「力持ちだ。カッコいい」
なんて、歌声と同じ優しくて甘い声で囁いて、無邪気にキスをする。
「うわぁぁっ……あはは。すごい、高雄、ジェットコースターみたいだ」
ジェットコースターみたいにグラリとしたのは要が酔ってるせいだろ。宙返りなんてしてない。ただ、この人をそっとベッドに下ろしただけ。それでも、グラグラ揺れて、一回転したように思った?
「酔っ払い」
「うふふ」
楽しそうに笑いやがって、こんなカチョー、誰かが見たら目玉飛び出るぞ。ホント……丸ごとたまらない。できたら誰にも知られたくないなんてガキみたいに思ってる。何をするのも一生懸命なとこも、少し天然なとこも、だから、カラオケで思いっきり歌ったんだ。要にあまり注目がいかないように、こっちに注目が集まるように。
ガキみたいだろ?
わざと女受けの良さそうな歌を選んだんだ。
「高雄を独り占めした悪い酔っ払いなんだぞー」
「ちょっ」
ぐいって引っ張るなよ。そのままあんたの引っ張る力に任せて乗っかったら、潰れちまうだろうが。
慌てて、手を付いて踏ん張ると、無邪気に首にぶら下がって額を俺の首筋に擦り付ける。柔らかい髪がくすぐったい。
「俺の、だもん……」
「要?」
「女性社員がカッコいいって高雄が歌ってる時に言ってたけど、俺のだもん」
「……」
「もう、あの歌は禁止だからなっ」
選んだ歌は切なくて甘いコテコテのラブソング。好きなんだと相手に何度も告げる去年の結婚式で歌われたい歌に選ばれたとか、だったはず。モテたい一心でそれを練習してた山下からそう教わった。
女を落とす歌。
「わかったのかっ!」
それで女たちの気を引いて、要を俺の後ろに隠したんだ。
「高雄! 次のカラオケ大会で歌っていいのは、国民的アニソンだけだからなっ!」
「へぇ、どんなの?」
「えっと、あんっ」
「……」
「あ、ン、ちょっ、歌ってるっのに、ぁンっ」
なぁ、じっとしててくれよ。
「あ、ン、や、ら……胸、のとこ、キスしたら、ぁっン」
歌ってんだか、喘いでんだか。その声ひとつで俺のことを萌え殺すのとか反則だろ。
「むしろ、要はそのアニソン絶対に禁止な」
「ぁっ……ン、らって、歌、邪魔されるっ、もっと上手に」
そういう意味じゃなくて、下手だからとかじゃなくて。
勝手に可愛い解釈をするこの人をそのまま啼かせながら、ひん剥くことにした。キスをして喘いだところでまたシャツのボタンを外す。愛撫しながら服を脱がすのが最高に楽しい極上のごちそうみたいな人との前戯。
「……あっ、ン」
ゾクゾクしながら最後に剥くのは――。
「あっ……ン、見ちゃ、やだ、パイパ……ン」
ピンクのごちそう。
「あンっ、それ、やら、らめっ、気持ち、イ」
「っ」
「パイパンだから、キスしちゃ、らめっ」
そのワード連呼するなよ。すげぇコンプレックスだったくせに。すげぇ気にしてたくせに、煽るように連呼して。甘い声で俺を呼んで、カウパーが零れて濡れた肌をまさぐって、その白い指を濡らす。
「えっろ……」
「えろく……ちゃ、や?」
ゾクってした。
「ここ、して欲しいと頼むのは、や?」
アルコールに浸った舌っ足らずな言葉で誘われて、白い綺麗な指を官能的なピンクに染めて、ピンクの小さな孔を自分で広げるこの人に誘惑されて。
「早く、パンパンって……して欲しい、のっ」
俺の理性も蕩けた。
「ぁ、あ、あ、あぁぁぁぁっ……ン、高雄のっ、入ってくるのっ」
「っ」
「ぁ、大きくて、硬くて……ン、ぁっン、おかしくなるっ」
ずぶずぶにこの人の中に突き立てて。
「ひゃぁぁっン」
ずるりと引き抜きながら、吸い付く内側にまた。
「ああああっ!」
深く強くゆっくりと抉じ開ける。
「ぁあっ……ン」
たまらなく気持ち良くて。
「あ、ぁっ、高雄っ、高雄っ」
「?」
「一緒に、カラオケ、練習してくれてありがとう」
「……」
「また一つ、コンプレックスを直してくれた。俺の、ヒーローだ」
たまらなく、幸せだ。
「大好きだ。高雄」
「俺も、すげぇ、好きだよ」
どちらかともなく重なった唇に繋がった身体はとろりと蕩けた、甘いセックスの蜜音がした。
ともだちにシェアしよう!