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第9話 ゲイじゃねぇっつうの

 信じらんねぇ。男の尻に指突っ込んで、先走りで濡れた孔の浅いところだけじゃなく、指で届くところを何度も突いて、粘膜に本人の先走り塗り込んで、指の数増やして、孔を慣らしてるなんて。 「あ、ンっ……んんんっ、ン、くっ……んっ、っ」  指の数増やして、擦りながら、何度もこみ上げ来る熱を喉奥に押し戻すみたいに息呑んでさ。パンパンに張り詰めたペニスはそんな行為に萎えるどころか、痛いくらいに反り返り、興奮は冷めることなくただ温度をあげていく。 「痛い?」  苦しそうだった。花織さんは眉を限界までひそめながら、浅い呼吸を繰り返す。そんな険しい表情をしているくらいだから、孔はほぐれるわけもなくて、きつく指を締め付けていた。  花織さんは首を横に振る。きゅっと眉を寄せて、ピンク色の唇を噛み切りそうなほど強く歯を立てているのに、それでも堪えてた。 「違和感が、ある、けど、でも」 「でも?」 「恥ずかしくない」 「え?」  目が合った。今にも零れ落ちそうな大粒の涙を溜めて堪えている、この人が俺の下にいて、真っ赤になった唇で俺の名前を呼ぶ。  ずっとコンプレックスで、ずっと他人に見られるのも知られるものイヤだったのに、今、そのことを気にしていない。あんなに深刻に悩んでいたのに、今は気にならない。だから、そのまま続けてくれ――なんて言って、指を咥え込んだ孔をきゅんと締め付けた。拒否するとかじゃない締め付けに、こめかみの辺りに強い痛みが走る。 「庄司? あ、の……」  ホント、なんなんだ、あんたは。 「どうかし、ンっ……んんっ」  本気でそう思ってるのかなんて知らない。俺がさっき、この人を抱く言い訳として言った言葉を本気で鵜呑みにしてるのかどうかわからない。でも、そんなことを言って、指を孔の口で締め付けて、健気に首を振るこの人を、泣かせたいと思った。今、目尻に溜まった透明な雨粒みたいな涙をそこから溢して、揺さ振って突き上げて落っことしてしまいたいと思った。 「あぁぁっン」  キスしたいと思った。だから、首筋にひとつキスマークをくっつけてやった。 「あ、ダメっ……ぁ、あぁぁぁっ」 「花織さん、首筋も敏感なんすか? じゃあ、こっちはもっと敏感?」 「あ、ちょ、ひゃあぁぁぁっ」  乳首に吸い付いて、舌でたっぷりと扱いて、汁ダクペニスの真似をするように胸の粒も濡らしながら、孔の中を激しく掻き乱す。俺がこの人に理性を掻き乱されたようにぐちゃぐちゃにして、熱くて疼くほどに狂わせる。 「え? あ、ちょ、ちょっと、痛いっ! 庄司! イタッ」  この人の内側で指先が見つけ出した小さな肉粒。ゲイじゃなくたって、それは知ってる。 「前立腺」 「え?」 「痛いんじゃなくて、痛いくらいに気持ちイイってだけですよ。その証拠に、花織さんのここ、またエロい汁が溢れた。音でも聞こえるでしょ?」  じゅぷじゅぷとラブホテルの一室に響く濡れた音は扱かれるペニスじゃなくて、そこから溢れた先走りが伝い零れて、尻の孔を行き来する指を濡らす音。 「あ、あぁぁっ! ン、ダメ、そこ、ダメっ、やぁぁっ……」  そこを指で突いて押して、愛撫しながら、これは痛覚じゃなくて快楽だって教えるように乳首の快感をその刺激に添えて、教えてあげる。チラッと少し下へと視線を送れば、ピンク色のペニスの先が赤く火照っていた。スケベな色をしながら、先走りを垂らし続けて、ほとんど生えていない陰毛の上を流れていく。そして、そんなペニスは今にもイきそうだと泣きじゃくってる。 「ダメ、ぁ、あぁぁ、庄司、ダ……ぁ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!」  だから、強く扱いて射精を促す。先端がぎゅっと硬くなったと思った瞬間、反り返ったペニスの先端からビュクッと弾けた白い体液が、この人自身の白い胸にまで飛び散った。 「あ、あ……庄、司」 「……」  膝を立てて、脚の間に指を三本突き立てられたまま浅く激しく息を乱している。事後感たっぷりの色気が花織さんから夏の夕暮れに漂うクチナシみたいに甘く香っていた。乳首も、唇も、ピンク色。そして、首筋にはひとつキスマークっていう模様をくっつけて、腹の上を精液で汚す上司と目が合った。シャツもスラックスも乱しただけだった俺は目を合わせたまま全部を脱ぎ捨てる。最後、シャツも脱いで、ベッドの下へと落として、意思を持って見つめると、浅い呼吸を続けていた唇がきゅっと一文字に結ばれた。 「まだですよ」  意思を、今からセックスを、男同士の俺とあんたでするっていう意思を持って見つめて。 「……ぁ」  貴方は今から、抱かれるって意識したと、その唇で示してる。 「もっと、恥ずかしいことしますから」 「あ、そんな」  立てられた膝を割り開くように手を添えて、この人の懐へと忍び込んだ。そして、潤んだ瞳が見つめる、そそり立った俺のペニスを―― 「息、止めないで」 「あ、だって、そんな」  ペニスを孔の口にくっつける。きゅん、と身構える身体。 「あ、やぁぁぁぁぁぁっ!」  指先でかすかに生えている花織さんの陰毛を撫でた。先走りに濡れたそれを撫でながら、腰を突き入れた。 「っ」 「あ、ウソ、入って……庄司、のっ」  ウソ、みてぇ。 「っんだよ、これっ」 「ぁ、あぁぁぁぁっ」  腰を突き入れた瞬間、溢れて零れたこの人の涙にわけがわかんなくなった。 「あ、あぁっ、ン、ぁ、待っ、ぁ……んんっ、ぁ、庄司の大きすぎて、入らな」 「入ってるよ」 「あぁぁっン、ぁ、ダメ、そこ、さっきのとこ、は、ぁっ」  全部あんたの中に入ってる。持ってかれそうなくらいきつくて狭くて、なのに、なんでこんなに甘ったるく気持ちイイんだよ。 「あぁっン、あンっ……ぁ、ダメ、熱いっ、ぁ、あぁぁっ」  初めてなのに、吸われるように絡みつかれて、何も考えられない。この人の、この身体の奥を俺ので掻き乱して、突き上げて、やらしくうねる粘膜を抉じ開け、その中で、扱くことしか考えられない。  腰を突き入れる度にやらしい音がした。エロい声が気持ち良さそうに、この赤い唇から零れるのがたまんなくて、貫いて、引いて、もっと奥へと自分自身を捻じ込んでいくのを止められない。 「ひゃぁぁっ、ンっ! ダ、めっ……それ、乳首、ダメっおかしくなっちゃうっ」  腰を振って、繋がった箇所をくちゅくちゅ慣らしながら、薄っぺらい胸に齧りついた。日焼けを知らない白い肌は少し吸っただけで赤い痕が残るから、何度も、何度も、キスをした。面白いように律儀にひとつひとつ残っていくキスマークをたっぷりと首筋、鎖骨、胸にくっつけて、身体を起こして眺める。 「ぁ、庄司っ」  キスマークだらけの白い肌、敏感でやらしいピンク色の乳首、ペニス、身体のあっちこっちを濡らしながら、大きく開いた奥に俺を突き入れられてる。  ゲイじゃねぇよ。男相手に自分が勃起するなんて、今まで思いもしなかったっつうの。でも―― 「どうしよ、すごく……ぁ……」  でも、気持ちイイって、あの低い声が甘く呟いたりするから、もう、なんもかんも吹き飛んだ。吹き飛んで、消えて、ただ、今ここにある熱だけを夢中になって抱き締めていた。

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