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電話しつつ……編 1 思慮深き上司の憂い事
真面目で、思慮深く、礼儀正しい男がさ、自分の欲しいものを淫らに欲っする姿なんて、そりゃ、そそるだろ?
俺は最高にそそられる。
あんたがそんな一面を見せてくれたら。
「うーん……」
「要?」
休日に、二人でぶらりとショッピングモールに出かけた時のことだった。
要が、うーん、と唸って、手に取ったマグカップと睨めっこをしている。すっげぇ………………変なマグカップと。
何、その斬新なマグカップ。
筋肉大盛りな男性の裸を象ってるとかさ。ずっと男の裸体に口くっつけるって飲むことになるんだろ? それ。
「これ……どう思う? 高雄」
「ビミョーだろ」
「うん。そう思うんだ」
だよな。よかった。そこのセンスは一般的で。いっつも要は俺の斜め上を突き抜けるから。
「もう少し」
「あぁ」
「洗いやすい方がより良いと思ったんだ」
「そこかよっ」
「えぇぇ? だって、だって、洗いづらそうじゃないか! それにここ、この股間のところ、内側を見るとへこんでるんだ! ここに飲料が残りそうで」
そこ?
マジで、そこ? 洗いにくさと、飲み残しが気になるってだけ? デザインは? なぁ、そのデザインはそれでいいわけ?
そんでもって、今、股間ってさらりと言った? ショッピングモールのど真ん中で、結構な音量で。
「いや、別に商品開発の方々の渾身の商品なんだろうが、自分が営業という立場からこれを売り込むと考えるとだな」
仕事に繋がるとは思わなくて、クスッと笑っちまっただろ。
まさか商品開発とかさ、そこまで真面目に考えてるとか。
つい、先日だっけ?
会議の時に、営業二課の課長と、納期管理方法について激しく議論を交わし、効率のいい納期管理方法を披露してみせた、とても厳しく、時には激しく意見を交換し合うような仕事のできる課長。
今もこのおかしなマグカップを片手に真面目に仕事のことを考える、真面目な課長。
休日に、だぜ?
けど――。
「さて、んじゃ、帰るか」
恋人との買い物をしている最中にそんなことを考えてたクソ真面目な課長がさ。
「要」
「うん」
手を差し伸べると、頬を桃色に染めて、はにかみながら俺の手を取るんだ。
めちゃくちゃ可愛いっつうの。
「夕食、どうすっか。何にする?」
「あ、今日は、この前、テレビで見かけたレシピのにしよう」
「あぁ、あれ? 魚の?」
「それ! とても美味しそうだった!」
「じゃあ、スーパー寄るぞ」
買いたかったものも買い終わり、ぶらぶらするのもそろそろ疲れた。あとは夕食の食材を買って帰ろう。ちょうど、来週末は重要な打ち合わせがいくつか入ってるし、それから、週末に要は同期会、だっけか? があって、定時で帰りたいらしいから、仕事がいつもよりも忙しいんだ。早く帰って寝た方がいいだろ?
同期会に関して、まぁ、多少なりとも面白くはないけど。でも、まぁ、そこは少し余裕を持つべきだろうと。
「……要?」
隣を歩いていたはずの要が忽然と消えた。と、慌てて振り返ると、ガラスケースの中をじっと見つめている。
「どうかした?」
引き返し、要が覗き込んでいたガラスケースへ視線を向けると、ディスプレイされていたのは、ネクタイピンだった。
黒いガラスの球体。その中には輝く星のように青白いガラス? なのかな、が散りばめられていて、まるで夜空を模したようだった。
「いや……素敵だなと思ったんだ」
「あぁ。確かに綺麗だな」
夜空に光り輝く星みたいだ。胸に夜空を飾っているよう。
けど、要はそれをしばらく眺めた後に、そのガラスケースから離れてしまう。
「買わないのか?」
「あぁ、いいんだ。必需品でもないし、少し値段が張る。他にもっと安くて似たようなものもあるだろう」
買えばいいのに。少し値段が張るって言ったって、目玉が飛び出るような値段ってわけじゃないんだ。別に買ったって――。
「また、そのうち」
でも、要はそう言うと、ガラスケースから離れて、もう帰ろうと促すように少しだけ歩を早めた。
「あっ、ンっ」
あっまい声。
二人の寝室で、とろけたやらしい嬌声をあげて、要が俺のを咥えた孔をきゅんと締めた。
「っ」
息を飲むほど、要の中にしゃぶりつかれて、熱がある身体はまた、そのしゃぶり付く心地の良さをもっと味わいたいって、勝手に腰が動くんだ。
中が気持ち良くて。
深いところも浅いこところも、どこもかしこも気持ちいい。
「あ、そこっ、あんまり突いたら、ダメっだっ」
「なんで?」
「あ、あ、あ、あ、ダメっ」
四つん這いになった要が背中を丸めて、キュッと自分を抱きしめるように腕をその懐にしまいながら、わずかにこっちへ顔を向ける。
「気持ち良すぎる、から、あ、あぁあ」
なぁ、そんなの言われて、じゃあ、突かないでいようなんて思う男、いると思う?
「あ、あ、あ、あぁあ、高雄っ、高雄っ、ダメっ」
もっと奥まで、要が好きな場所まで抉じ開けたいって、掌で尻を左右に押し開くと、中をぎゅっと締めながら、ダメだと連呼した。
「高雄は、明日っ」
あぁ、なるほど。
「高雄っ」
こういう時、不便だなと思う。
明日、俺には大事な商談があるから、激しくするなって言いたいんだろ?
急に上司の、真面目で思慮深い花織課長になんて、させないと、バックで奥深くまで俺のを捻じ込みながら、その白い背中に歯を立てて、つるりとした下腹部を後ろから撫でた。
「や、ぁっ、おかしく、なっちゃ」
なればいいのに。
いくらでも。
だから、毛の生えていない、そこを撫でて、中が絡み付いたところで、腰を鷲掴みにして、激しく、中を擦って、その白くて華奢な身体を突き上げた。丸まっていた背中を今度は逸らして、甘い悲鳴を響かせた。
「あぁぁ、あ、あ、あ、高雄っ」
そして、きゅぅんとしゃぶりつく要の身体を抱き抱えながら、俺も――。
「あ、あ、あ、あ、高雄の、ゴム、してるの、に」
ドクドク、ってさ、放ってるのを腹の奥んとこで感じた? 要がちょうど、今、手で押さえてる下腹部の辺りですげぇイったってさ、感じた? けど、まだ欲しい。
要の奥もまだ欲しそうだけど? ほら。
「あっンっ」
絡み付いてくる。まだ離してくれそうにないんだけど? ここ。
「足りない」
「あっ」
だから、もう一回。そうねだるように、真っ白な肌を撫でて、毛の生えていないペニスの根元を撫でてやると。
「やぁ……ン」
口から出た言葉とは裏腹に、中が絡み付いて、俺のをその奥深くで、しゃぶってくれた。
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