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通販でも斜め上を貫く編 2 その栄養ドリンクは……
だからさ、なんで、俺の斜め上を行くかな。
ビューンっつって。
ドーンっつって。
なんで、そんなとこに飛んでくかな。
「た、か……っン、ぁっ、これっ」
なんで。
「んんっ、熱いっ」
なんで、栄養ドリンクと媚薬、間違えるかな。
「わ、か、らないんだ。月曜あたりから、っ、ヘトヘトで、疲れてたし、ン、なんとなく体調、良くなくてっ、だから、栄養ドリンク買ったんだ。通販で」
「……あぁ」
キッチンに畳んでリサイクルに出すからとテーブルの上に置いてあった箱。たぶん、あれが通販で買った「媚薬」の入ってた箱なんだろうな。そんで、これ飲んだら栄養満点、元気百倍、体力回復、そんで明日のデートまでに風邪は完治って。
「す、ごく。いいのを買った、んだ」
だろうな。すげぇ、ある意味効果抜群だろ。
「速攻元気、滋養強壮、即効力抜群……って」
うわぁ、それは……すごいな。なんか、えらいもん買ったな。まぁ、そもそも栄養ドリンクじゃねぇけど。
「な、のに……飲んだら、なんだか身体が火照って、暑いっ……ン」
媚薬だからな。
「そ、れにっ……ここ、が」
言いながら、恐る恐る、要が抱き締めていた枕を置いて、自分の身体をぎゅっと今度は抱えた。
「ここ……」
抱えて、家着でギリギリ隠れてるのがむしろエロいそこをちら見せしてくる。細くて白い指で服の裾をはらりと捲って。
「ど、しよ……俺は薬効きすぎてしまうら、しいっ」
なるほど、そっちに解釈するのか。薬が効きすぎる体質だから、栄養剤もめちゃくちゃ効いて、こんなふうになっちゃったと。
「要」
「? あ、高雄……熱が上がってしまって……る、から」
なるほどなるほど、それは風邪の熱だと。
そういう場合もあるかもしれないけど。
「頭痛は?」
「な、い……頭は、痛く、ない……けど、クラクラ、しゅ、る」
「舌っ足らず……体は? 痛かったりするか?」
「し、ない……痛くない、でも、ビリビリする」
「水とか飲んだ?」
「あ、そこ、に……でも、力が入らなくて、水飲めな」
ベッドサイドの手付かずのペットボトルの水が置いてあった。
多分、こうだ。栄養剤を飲んで、あとは休息第一、回復最優先、ってことで寝ている最中に発熱による発汗を考えて、水分補給をって、持ってきた。
でも、飲んだのが媚薬だったから手足が痺れて、キャップが開けられない。
「要」
「ん……」
ペットボトルの口を開けて、いっぱいに水を口に含むと、要へキスで流し込んだ。
「ん……ン、ク」
要は俺にしがみつきながら、身体だけはキュッと丸めて、喉を鳴らす。
「もう一回」
「ン……」
舌、あっついな。
「もう一回」
「ンンっ……ン、ん」
この舌。
「ン、あ……高雄、もっと、飲ませて……」
すげぇ……美味そう。
「んんんっ」
もう一度口いっぱいに水を含むと、待っていた空腹の雛鳥みたいに俺へ腕を伸ばしてしがみつき、自分から舌を絡めて喉を鳴らした。ごくりと大きく喉仏を上下させて、そして水が唇の端から伝い溢れて、要の白い首筋を濡らすのも構わず、もっと……とせがむように俺を引き寄せる。
「ん……高雄……」
甘い声。
「ん……ン」
甘いキス。甘い、舌。
「要が飲んだ栄養ドリンクさ」
「?」
マジか。本当に気がついてねぇ?
「それ栄養ドリンクじゃないから」
「?」
そうなのか? なんて、熱でポーッとした顔で首を傾げてる。
「あぁ、それ、媚薬」
「……媚」
「エロくなっちゃうお薬」
「……ぇ?」
「多分、まぁ、興奮剤、だな。そこまで悪質なものじゃないだろうし、すぐに抜けるだろうけど。少し、要は効きすぎるんだろ」
そもそもあんた自身シラフでエロいしな。そこにすこーし媚薬がプラスされたって感じ、かな。
「間、違えた、のか?」
「あぁ」
「あ、じゃあ、よかった」
「?」
何が? って首を傾げた。良くはないだろ。そう思った。でも要は、ホッとしたのか俯いて、表情を緩めた。
「これ、熱が上がったんじゃないんだな」
ホント。
「っぷ」
「高雄?」
「いや……なんでもない。そうだよ。風邪で熱が上がったわけじゃないから、安心しろ」
あんたは俺の斜め上を行く。
「ン」
この火照りも、ポーッとするのも風邪のせいじゃないと分かった要がホッと安堵の溜め息を零してから、俺を引き寄せる。そして、もう水じゃなくて、俺の舌に大胆にしゃぶりつくとキュッと腕に力を込めた。
「要」
耳を指でくすぐると、肩をすくめて。そのまま手で耳を塞ぐ。
「ン」
入ってんな。
「あっ……」
要のエロスイッチ。
「ンンンンんっ」
「すげ……」
「あっ…………ン、ど、しよ」
今度は何に困った?
「高雄」
「……あぁ」
「これも媚薬のせいなのか?」
少しワクワクする自分がいる。また、要が俺の斜め上をビューンって飛んでいってくれることを。
きっと、俺は要の次の言葉でさ。
「高雄のキスでこんなにイッてしまったんだ」
「……」
「そしたら、これ以上したら、どうなっちゃうんだ……」
ほらな、ものすごく、やばいくらいに胸が躍って、全身を火照らせて、あっちもこっちもピンクにした要に今にも襲いかかりたくてたまらなくなった。
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