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課長はレース派編 5 俺の可愛い人

「高雄っ……ぁっ」 「っ」  興奮で、喉奥が焦げ付く。 「ぁっ……見て……ぁ、あっ」  昼間、皺ひとつなく着こなしていたシャツをくしゃくしゃに乱しながら、ボタンをいくつか留めただけのだらしのない格好で、甘い声を上げて身体をゆっくりと降ろしてく。  淡いピンク色のレースは身に纏ったまま。 「あっ、入っちゃうっ」  自分で淡く可憐なTバックをずらしながら、ずぷりと身体を沈めていく。沈めた瞬間から、やばいくらいに絡みついて、中トロットロなくせに狭くて、キツくて。 「っ」 「あっ!」  全部飲み込むと、要が妖艶な表情で首を傾げた。 「高雄」  昼間はもう少し低くて、凛とした声が、蕩けてる。 「高雄に、だけ、だ」 「っ」  そうじゃないと困る。 「高雄に、だけ、見て欲し、ぃ……あ、あっ」  こんな可愛い課長なんて。 「高雄っ、高雄」 「な、に……」  夢中になって腰を振りながら、テキパキ仕事をこなす手を、柔く、俺の首に巻き付けて、颯爽と歩くスタイルのいい脚を俺の腰に絡ませて。 「高雄っ、俺で」 「っ」 「たくさん、興奮して」  普段はキリリと結んだその唇で。 「あ、あ、あ、っ、激し、いっ、の、だめ、見えちゃうっ」  俺の唇に夢中になってキスをする。 「ン、んっ……ン、ふ、ぁっ……」  いつもはスーツで隠してる白い肌を色づかせて、華奢な身体をくねらせてる。 「見えちゃう、恥ずかしい、い」 「だから、いいんだろ?」  気持ちいいのと羞恥心とがこんがらがって真っ赤になった要がキュッと唇を結んだ。 「もっと俺で気持ち良くなって、乱れた要が見たい」 「あっ、あの、平気……か?」 「は? 何が?」 「その、女性モノ、の、下着身に付けてる、のに、その、はみ出して、も」  真っ赤になって狼狽えて、けど、繋がったところはずっと気持ち良さそうにキュンキュンさせながら。 「男性の、見えても? 高雄、は、興奮、たくさん、してる、か?」  こっちはしすぎで、クラクラしてるんだっつうの。それなのに、この人はそんなの知らずに、切なげな声で表情で、必死になってる。 「高雄」  俺に夢中になってる、とか。たまらない。 「あぁ、やばい」 「あ、あっ、動いちゃ、ぁっ、激しいの、ダメっ、はみ、出ちゃうっ」 「もう限界、要」 「あっ!」  名前を呼ぶと、中がキュッと締め付ける。 「高雄、嬉し、興奮、して、くれるの」  もうこれ以上とか。ホントさ。 「もっと、名前呼んで、たくさん俺に」  もう、ホント、この人以外なんて。 「興奮、して」  一生ねぇわ、って心底思ってる。 「やっぱりこっちの方が落ち着く」 「そ?」 「あぁ」  要はほっと溜め息を一つついて、いつものパジャマにいつもの下着を身に付けて、にっこりと笑った。 「それにしても女性は大変だと思った」 「?」 「服にラインが見えないようにとあんなに心許ない下着を身につけるなんて」  心許ないってきっちりした言葉に思わず笑うと、要が不思議そうに首を傾げた。  この要も、だな。  この要も誰も知らない。 「っつうか、くせになったりしねぇの?」 「? 何が? 寝癖?」 「じゃなくて、女物の、レース、気持ちいいって最後のほう言ってたろ?」  Tバックの紐を引っ張ると、キュッと締め付けられて、けど、レースの肌触りが気持ちいいって、甘い声で囁いてた。  自分の指でそのレースを撫でながら、中、キュンキュンさせて。 「! あ、あれは、というか、し、しないっ、癖にならない! あ、あ、あ、当たり前だろう!」 「ふーん」  真っ赤だ。  さっきは自分から、腰振って、もっとって大胆な格好してたのにな。今、目の前にいるには恥ずかしがり屋で、自分のエロさを全く気がついてない超天然。  普段の、仕事のできる要はここには、俺の前ではあんまり顔を出さない。今、同じベッドの中に潜り込んできたのは、風呂で温まった頬をほんのり蒸気させている、隙だらけで無邪気な、ただ年上の俺の恋人。 「でも……」 「?」 「仕事の時はしないけど、こ、こここ」 「……」  俺のだ。 「こういう、時は、しても、いいかなって……」 「へぇ」 「その、くせに、とかではなく、えっと、その、だから」  どんな手強い場面でも完璧に仕事を完遂できて、どんなに手強い相手との商談でも淀みなく話を進められるのに、今、目の前にいるのはしどろもどろで真っ赤になって、狼狽えてる。  ただの。 「高雄がたくさん興奮してくれるのはとても、嬉しい、から、だからっ、うわっ」  ただ可愛いすぎるこの人を組み敷くと、びっくりしたように目を丸くする、そんな、いまだに恋にあどけないところがあるくせに、スイッチ入ったらどエロくてさ。 「あんま可愛いことばっか言うなよ」 「え?」 「明日、大事な打ち合わせ入ってんだろうが」 「う、ん」 「寝るのも仕事だぞとか言いそうな真面目な花織課長を寝不足にさせるわけにはいかないからって、必死に我慢してんだぞ」 「!」  そう言われて、すぐに嬉しそうに顔を綻ばせるような。 「じゃあ」 「?」 「週末、また」  その手で俺を引き寄せて、キュッと抱きつく、クソがつくほど可愛い。 「たくさん、興奮してくれ」  俺の要だ。 「あーくそ! だから興奮してるっつうの」 「あはは」 「笑うなよ!」 「だって、あははは」  俺の――。

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