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課長のひとり○○篇 2 世界一のごちそう

 二週間我慢したのに、明日帰ってくるのに、要が、あの花織課長が我慢できなくてオナニーしてた。なんて、どんだけ俺を驚かせる天才なんだよ。 「高雄が欲しかったんだ」  そんな切なげな顔でこっち見上げるなよ。 「高雄のこと、誘ってる」  喉が、ごくりと部屋に響き渡りそうなくらい大きな音を立てて、欲情を飲み下す。 「誰か、なんかじゃない。高、ぉ、が……欲し、くて……ンっ」  飲んでも飲んでも喉奥からこみ上げてきて、溢れそうになるから、口移しであんたにもあげるよ。これ、飲んで? キスで舌絡ませながら、唾液と一緒に飲んで? 「ン、高雄の、キス、二週間ぶり、だ」 「あぁ」  ほら、興奮しすぎて返事が不貞腐れてるみたいに無愛想になった。それでもかまわず、嬉しそうに俺の首に腕を絡ませて引き寄せて、自分から柔らかくてエロい唇を開いて、舌を差し込んでくる。喉まで鳴らして、美味そうにキスを食らう花織課長。 「あ、ふ……ン、もっと、キス、したい」 「……」 「もっと、高雄」  喉カラカラになって水一滴でもいいからって懇願するみたいに、俺を欲しがる姿がやばくておかしくなりそう。 「触って、要」 「ぁっ……何」 「っ」  ひと撫でされただけでイきそうになる。それを必死に堪えて、力んで、目の奥がふわっと白くもやがかかるくらい。 「高雄の、熱い」 「そりゃっ」  そうもなる。二週間、どんだけ会いたかったと思ってんの? 「要に会いたくて、必死こいて仕事して、終わったその足で帰って来たんだからな」 「……」 「あんたが一番よく知ってるだろ? 俺が出張なんて率先してやるタイプじゃないなんてこと」  自分のため、仕事のため、そんな理由じゃ必死にならない。俺がめんどくさがらず何かをやるとしたら、そこには必ずあんたのことがある。知ってるくせに。もし知らないのなら、いい加減覚えろよ。 「あんたのことだけだよ」 「……」 「俺がめんどうだとひとっつも思わねぇの」  何度言っても、その都度、律儀に驚いた顔をするこの人のうなじを掴んで引き寄せて、奪うようにしてキスをした。邪魔くさいジャケット放って、普段は別になんてことないはずのネクタイが興奮に乱れた呼吸の時じゃやたらと息苦しいから、雑に解いて、ベッドの下に捨てた。シャツもなんもかんもメンドクサイ。早く、要が欲しくて、邪魔。 「高雄の……」  ベルトをカチャカチャと音を立てて外すと、俺の手に要の白い手が重なった。そして、指をからめて遊ぶようにチャックを下ろして、下着引き下ろして、もう痛いくらいに張り詰めているそれを、咥えた。 「かな、めっ」 「ン……高雄の……大きっ、ん」 「っ」  目を瞑って、口の中で感じる形をなぞるように舌を這わす。唾液を口の中で掻き混ぜるように音を立てながら、俺のペニスを美味そうに口に咥えて、切っ先は舌を使って丁寧に撫でて。 「高雄の……」  美味そうに口に咥えて。 「っ」  気持ち良さに息が詰まった。  フェラの邪魔をしないようにしながら、髪をすいて頭を撫でた。咥えてるあんたのほうが気持ち良さそうな顔してペニスの先を喉の奥に自分から招いて、頬の内側まで使って扱いてくれる。耳に指先で触れると、細くて白い肩を竦めて、くすぐったそうにしていた。 「んっ……んっ、ンンンンっ」  そんな細い肩を撫でてから、もっと指でなぞって摘んだ粒に要が口を塞がれたまま甘い悲鳴を零す。  コリコリに硬くなった乳首を指で摘まれて、夢中になってフェラをする唇がきゅっと竿にしゃぶりついた。 「ん、ん」  やらしい乳首。指の腹で何度か撫でただけで、こんなに尖って、あんたもやらしい表情をして。俺の指にキスに開発されたエロい乳首は、二週間、俺に触ってもらうのを待っていた? すげぇ。摘んで爪で弾くだけであんたの声が糖度を増していく。 「ん……っ」  熱に浮かされたみたいになってるけど、こんなんであんたちゃんと仕事してたのかよ。今日って金曜だろ? 週末だから来週の予定とかミーティングあっちこっちでやってたんじゃないのかよ。こんな発情しながら、会議室でふたりっきりとかなったら、男は大概……。 「ン、高雄……高雄?」  あ、考えたらムカつく。 「……」  だって、あんた無自覚すぎんだよ。俺に開発されたんだなんて言うけど、このやらしい身体に俺が開発されたんだ。 「こんなエロいのに、二週間我慢できた?」 「っ」 「こんなに敏感な乳首、シャツ一枚じゃ、ダメだろ。すぐに勃つやらしい乳首。」 「んあぁっ!」  指で摘んだら、気持ち良さそうな顔をして、目元に涙を溜める美人なんてさ。きっとどこにいてもらっても、俺は焦って、めんどくさいくらいに慌てるんだろうな。 「我慢、したに決まってるだろ」 「ホント?」 「したっ!」  年上で上司のくせに、頬膨らませて抗議するような人に面倒なくらい惚れたんだ。 「でも、あんた、隙多いからな」 「んなっ」 「俺のいない二週間の間に、あんたに惚れた奴は何人かいるだろうな」  無防備極まりない危険人物だけど、でも、この人を自分のものにできるんならなんだってする。独り占めできるんなら滑稽なくらいひとりで右往左往してやる。 「知らない」 「……」 「高雄だけだ」  バターたっぷりの生地を焼いて、蜂蜜染み込ませて、生クリームぶっ掛けて、その上からチョコレートソースかけたお菓子みたいに甘いくせに、苦くて仕方ないコーヒー味のゼリーも入ってるみたいな人だから、クセになる。 「調べて……」  ほら、めちゃくちゃゾクゾクする、病み付きになる味。 「中、来て、調べて」 「……」 「高雄しか知らない奥、ぐちゃぐちゃにして、調べてくれ」  自分から開いた脚を抱え込んで、オナニーでほぐれてヒクつく孔を晒す。身体を美味そうなピンク色に仕上げて、乳首も唇も、口にした瞬間のぼせるくらいのやらしい感触にして、ペニスから蜜まで零す、目の前のごちそうに喉が鳴った。  無自覚なくせに、完璧に計算されつくしたみたいに、甘美な誘惑。 「早く、奥に、来て」  むしゃぶりつきたくなるくらい、エロくて、美味い、俺だけの、ごちそうに。

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