23 / 140

第23話 まだ風呂場です。

「や、ぁ……そ、んなとこ、あぁぁっ……ン」  こんなことを自分が男相手にできるなんて思わなかった。しかも、嫌々どころか。 「吸う、なっ、ぁ……っ」  ツンと反り返った要のピンク色をしたペニスが言葉と裏腹に、吸った瞬間気持ち良さそうに、口の中でヒクンと跳ねた。細い腰が逃げたいような、でも、気持ちイイから、って揺れてせわしない。  自分がフェラしたいと思うなんて、想像すらしたことなかった。 「吸われて、気持ちイイくせに」 「っ」  竿を唇で扱くように締め付けながら上へとなぞって、最後、口を離す瞬間、先の丸みにキスをすると、要がどこか痛いみたいに眉を寄せてきゅっと唇を噛んだ。目は逸らすことなく、ずっと俺だけを見てる。 「眼鏡してなくて見えてんの?」 「こ、この距離なら見える」 「……へぇ」  ただの会話なのに、なんかゾクゾクした。この距離、つまり、ここまで近く、このセックスの間、裸眼でも俺のことが見えるんだ。眼鏡なくても、裸でむき出しの、その黒い瞳に俺がちゃんと見えてる。ただそれだけのことなのに、すげぇゾクゾクした。この人のパーソナルエリアに入れてることに興奮した。  要の全部、仕草、言葉、なんもかんもが俺のツボを押してくる。 「ひゃあぁっ!」  そそり立って、気持ち良さそうに涎を垂らすペニスの根元、毛、っつうか産毛に、音を立ててキスをした。ふわりとした羽毛みたいに優しい感触が、唇、口元、鼻先をくすぐってこそばゆい。 「や、ぁっ……ヤダやだっ、そんなとこ、ぁ、あっ」  カリッ、と産毛の生えた肌を齧ってみせると、甘い悲鳴を上げそうな自分の口元を手で覆い隠してた。ぎゅっと目を閉じて、その目元に涙を溜めている表情がたまらなくて、跪いたまま下腹部からペニスの根元、足の付け根を齧って、吸って、キスマークを残してく。薄っすらした毛の下にはキスする度にちゃんと赤い印が残っていった。 「見て、要」 「っ」 「ここ、すげぇ、キスマーク」 「あ、あっ、ヤっ」  この人が自分の身体で一番恥ずかしいと思っている箇所を他人に見られたっていう印。恋人だけが見て、触れて、キスをした証明がちゃんと肌にひとつひとつ残っていく。 「あ、あぁっ、ダメ、高雄っ、それ、やだ、ダメっ……イッ!」  産毛を唇で撫でて、歯で肌を齧りながら、顔のすぐ近くにある要のペニスを手で扱いた。先の丸みを掌でイイコイイコするみたいに撫でてから、くびれを指で作った輪で擦って、幹の部分はトロトロに垂れ流した要自身の先走りを塗り込むように撫でて扱いて。刺激にビクン! と大きく反応した。 「あ、ダメっ、だっ…………あ、あぁぁっ! イッ、イくっ」  ぱいぱんの素肌を齧られて気持ち良さそうに腰をくねらせ喘ぐ要の表情を下から見上げながら、興奮が収まらない。 「あ、高雄、た、ぁっ……あぁぁぁぁぁっ!」  あんたといると、全部が全部、気持ちイイ。 「あ、ぁっ……あぁぁン」 「まだ、出てる。要、そんなにぱいぱん齧られんの気持ち良かった」 「ぁ……ン、ぁ、よかった」  トロンと蕩けた要の表情に、無意識で喉を鳴らすほど。この人の全部が俺にとって甘くて美味くて、たまらない。 「気持ち、イ、ぎゃあああああ!」 「っんだよ」 「そ、そんなもの、口にしたら、は、は、は、腹を壊すぞ!」 「あんたが俺の手にぶっかけたんだろ」 「んぎゃあああああ!」  赤子か。いきなり叫んで必死に俺の手を両手で掴んで押さえつけてる。本当に赤ん坊みたいに顔を真っ赤にして、生まれたてみたいに敏感で真っ白な柔肌はキスマークの模様をつけて、水滴を弾きまくるから、雨粒がくっついた花に見える。花の蜜は甘くて、苦い。 「んんんっ……ン、んくっ……」  あんたは全身甘くて、美味い。 「ン、高雄……ぁ」 「俺の触って」 「!」  要の精液にまみれた指先を絡ませて、痛いくらいに張り詰めたペニスを握らせる。その硬さに目を見開いて驚く姿にまた興奮した。 「すご、ンん……っン」  硬い? 熱い? すげぇ反応してるそれに触れられて、たまらなくて、また甘い唇に噛み付いた。今度は何も言わなくても、俺の舌にしゃぶりついて、濃くてやらしい愛撫をその唇でしてくれる。俺が教えたやり方を年上のこの人は覚えて、キスしてくれた。  俺が教えたんだ。 「要……」  白くて繊細な指先に握り締められて、熱さをたしかめるように撫でられて、眩暈がした。 「ぁ、高雄? どうした? のぼせたか?」  華奢なあんたを壁と自分の身体の間に閉じ込めて、眩暈で倒れて押し潰したりしないよう、タイルに手をついて身体を支えた。そんな俺を湯気にのぼせたと勘違いし、心配そうに見上げながらペニス握り締めんなよ。 「高雄?」 「要の手、すげぇ気持ちイイ」  マジでこの手でイきそう。童貞のガキじゃあるまいし、でも恋人の手で何度か擦られただけでイきそうになる。そんなクソダサいところをあんたに見せられない。 「よかった……」 「え?」  倒れ込みそうなのを手で押さえているから、要の声がすぐ近くに聞こえる。安堵の溜め息の混ざった呟きが耳をくすぐった。 「俺も、今、高雄の手がとても気持ち良かったから、俺の手もそうだったらいいと思って」 「……」 「とても、気持ちイイだろ?」  そう言って微笑んで、ちゅっ、と小さくキスされた。唇に唇が微かに触れる子どものおもちゃみたいなキス。 「……高雄? あっ、下手だったか? その、まだ慣れてないんだ! 練習のしようもないし。だから、そ、そんな無視することないだろ! お前にだって気持ち良くなってもらいたかったんだ。ただそれだけなんだから、そんなっ、に……おこ」  思わず抱き締めてた。なんだ、これ、ありえねぇ。ひとりで慌てて、ひとりでぺらぺら話してる年上の人を見ながら感動して泣きそうだった。マジで、こんなのありえない。 「高雄?」  ただ触れるだけのキスがこんなに気持ちイイなんて。 「あ、あの……」 「何?」  息止まりそうなくらい愛しいと思えた人は童貞で三十路のこの人だけだ。 「やっぱり、無理か?」 「は?」 「続き、しないのか? まだ、お尻の孔に指……してないのは」  年上のくせに、三十路のくせに。 「今日はこれでお仕舞い、なのか? 俺はもうその、イってしまっ、だだだだだ、抱っこするな!」 「うるせぇよ」  上司のくせに、今まで付き合ったどの彼女よりも可愛くてムカつくから、全裸で抱っこで暴れてるのも無視して、ベッドの中へ引きずり込んでやる。 「こら! 濡れるだろ、シーツがっ、ぁっ!」  怒ってみたり、甘えてみたり、人のことを虜にしてみたり、マジでムカつくくらいに可愛い上司の唇にまた噛み付いて、腕の中に閉じ込めて、指でその白くて甘い身体を抉じ開けた。

ともだちにシェアしよう!