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第32話 もう十時ですよ。

 誰かと一緒に寝るのってこんなに気持ちイイもんだったっけ? 人肌ってこんなにずっと抱き締めていたいと思えるほどの心地だったっけ? 「ン、たか……ぉ……」  帰ってきて、俺の部屋でセックスして裸のまま寝た。セックスの最中はしっとりした瑞々しさで俺を夢中にさせた肌が今はサラリとした絹みたいな触り心地で、ベッドから起き上がるのを阻止してくる。  この人の体温が俺よりも高いから、だから、こんなに心地良いんだろうか。やっぱり朝が弱い要は俺の布団の中で丸まりながら穏やかな寝息をずっと溢してる。薄く開いた唇が呑気で可愛くて、美味そうで。 「んー……」  つい指先で摘んでみると、すっげぇ変な口になっておかしかった。なんともいえない、独特な柔らかさ。指先で摘むと、「何が起きてるんだ?」って眉間に皺を刻みながら、それでもまだ夢の世界に居座り続けてる。 「ン?」  なぁ、起きねぇの? 今日、一緒に初詣に行くんじゃなかったっけ? 初めてだ、って嬉しそうに話してただろ? 誰かと初詣に行けるなんてって喜んでたじゃん。 「要」 「ん……?」 「起きろ、朝だ。初詣行くんだろ?」  楽しみしてたんだろ? 早く起きて、朝飯食って、あんたは服を着替えにいったりしないといけないんだから。やっぱ、昨日、帰ってから一旦要を自宅マンションに返してやればよかった。でも、夜も遅かったし。 ――寒いから、早く、あったまりたい。  そう言われて、我慢できなかった。早く早くって身体も頭も全然いうことを聞かず、この人のことを欲しがってた。 「要」 「ん、高雄、あったかい……」  そう寝言で呟きながら、丸裸のこの人はその白い手で俺を探って、見つけて、腕にぎゅっとしがみついた。 「要」 「ン、ぁっ!」  ほら、初詣いけなくなるぞ? あんたが俺のツボをまた押したから。 「やぁ……ン、ぁ」 「要、昨日したから、柔らかい」  つぷりと孔の口に指を押し付けると、そこは柔らかく解れていた。やっぱりこの人の体温は少し高い。指が侵入した体内は熱くて、ちょうどよく濡れていて、そして、俺の指に絡みついてくる。指先からこの人の熱が伝わって俺のことを火照らせてるんだ。 「ぁ、やぁっ……ぁ……ン、ぁ、高雄、ぉ」  吸い付くように指を粘膜で愛撫されて、限界だった。朝一、しかも正月二日に、何サカってんだ。 「っ、要」 「ぁ、あっあぁぁぁっ! ぇ? ……え? 高雄? なにっ、ぁ、あぁぁぁぁぁっン!」  昨日散々ペニスを突き立てられてていた孔の口は悦んでいるみたいに、俺をまた飲み込んで、切っ先まで隙間なく絡み付いてくれた。昨日よりもやらしく吸い付かれて、奥めがけてグンと押し込んだ瞬間、甘い悲鳴と一緒に要がようやく目を覚ます。 「おはようございます。花織課長」 「あ、あぁぁっ! ン、や、だっ、ぁ、あっ」 「やだ? でも、ここはすげぇ気持ち良さそうに俺のこと飲み込んでるけど?」 「あぁぁっん……ン、んん」  腰を激しく動かして、要の奥、一番奥を突いた。 「ぁ、あぁっ、あンっ……ン、朝、なのに」  聞こえてくるやらしい濡れた音に興奮が止まらない。前に身体を倒して、セックスの快楽で目を覚ました要の火照ってピンク色に変わった肌色にキスをした。昨日残したキスマークにまた上書きするように、赤い模様が残っていく。 「やぁっン、初、もうで」  じゅぷ、じゅぷ、って部屋に響くセックスの音。セックスの時にしか聞こえない気持ち良さそうな要のやらしい声。  突けば突くほど、深くを貫けば貫くほど、もっと気持ち良さそうな顔をして、白い指先が俺の背中を抱き締めてくれる。奥を、前立腺をペニスで擦って押し上げるとすげぇ気持ち良さそうに喉をそらして喘いでた。 「あぁ、初詣、行きたいんだっけ?」  止められるわけねぇじゃん。 「あっ!」  要が甘い吐息をひとつ小さく溢して、そして、シーツを握り締めて何かに堪えるとうに眉をしかめる。デスクで難しい顔をよくするけれど、同じ眉間には皺が刻まれているけれど、その表情は全く違っていた。 「初詣、だろ?」 「っ!」  ゾクゾクした。目を潤ませて、我慢しているせいでぎゅっと噛み締めている唇、こっちを見上げる瞳はどこか怒っている。 「今……あぁ、十時だ」 「やっ……ぁ」  上体を起こし、ふたりの間に空間が生まれた。俺は視線を時計に移し時間を確認する。少し身じろぐだけで零れるやらしい溜め息。 「要?」  今、きゅんと要の孔の口が俺を捕まえようと締め付けた。腰をギリギリまで引いて、あとほんの少し身体を後ろにしたら、俺のは要の中から抜ける。切っ先をこの人の浅いところに少しだけ捻じ込んでいるだけの状態。 「や、ぁ……っン」  また、吸い付いた。ただ、そこでしか触れ合っていないのに、目が眩むほど気持ちイイ。シーツをぎゅっと握り締めて、今にも零れそうな涙はすっげぇ透明で綺麗。白い太腿は俺の身体を押さえつけるように挟み込んでいた。  もっとして、もっと奥に来て、気持ちよくしてって太腿と孔の口は必死になって俺に伝えるのに。 「ぁっ」 「要?」  初詣、早く支度しないと、出るのが午後になるけど? って、無言で問いかけた。どうする? って、首を傾げると、潤んだ瞳で俺を上目遣いで睨みつけてた。  あの花織課長に睨まれたら石になるのに、今、石どころか繋がった場所からトロトロに溶けて混ざり合いそうだ。 「ぁ、た……ぉ」 「何? なんか言った?」 「ンンっ、ン」  わずかに腰を左右に揺らす。前後はちょっと動かしただけで抜けるだろうから。その小さな刺激も拾い上げる敏感な要が薄く唇を開いた。 「……て」 「何? 要、聞こえない」  イジワルしないでくれって、表情で文句を言うけれど、それを無視して少しも動かずにいる。 「もっと」 「え? 何?」  あとで雷落とされるかもな。 「もっと、奥、まで……来、あぁぁぁぁぁぁぁっ!」  おねだりの言葉をあの特別柔らかい唇が言う、それだけでイきそうだった。我慢できず、浅いところでずっと堪えていたペニスを深く、奥まで、ずぶっと突き立てる。きつい孔の口もやらしく絡みつく粘膜も、昨日あんなに飲み干した熱をまた欲しがって疼く最奥も、全部に食らいついて深いところに俺を突き刺した。 「あ、ぁあっ……ン」  その衝撃に蕩けた溜め息を溢す要の腹の上には自身の白が飛び散っていて、毛のほとんどない下腹部も、ピンク色の卑猥な乳首も、あちこち、白で飾り立てていて、息を飲むほどいやらしくて、綺麗だった。

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