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第47話 おねだり、上手?

「ン、ふっ……ン、ぁ高雄っ、たか、おっ」  ストールを奪って、ジャケットを脱がせてる最中でも、要はキスが欲しいって、唇に唇を押し付けて、何度も吸っては甘い溜め息を吐いて、俺にしがみついてる。首に腕を絡めるようにして引き寄せて、下から上を見上げるように全部を預けて、キスをもっとして欲しいって全身で告白してた。 「要」 「ン」  ごくりと大きな音を立てて要の喉が鳴った。激しいキスに柔らかい、粘膜でもある唇は真っ赤に染まって、濃厚に交換し合った唾液で濡れてる。 「あぁっ、ン」  息をするのを忘れそうなほど色っぽいから、肌に吸い付いて、あからさまな痕をその首筋にくっつけた。赤く残ったキスマークはワイシャツの襟の場所よりも上。 「あ、の、高雄」 「何?」  少しだけ距離を取った。でも引き寄せた腰はしっかりと密着したまま、額は触れ合う距離のまま、ふぅ、とひとつ呼吸を整える要の吐息が唇に触れる。 「その、今度は上手く、できたか?」 「は?」 「おねだり、ちゃんと、高雄のことが欲しいって、誘えてたか?」 「……」  振り回されて、大空に放り出され、なんか飛んでるみたいに浮いて、落とされて。あんたに触れてから、俺はずっとそんな感じだ。ホント、あんたは俺をしんどいくらいにブンブン振り回してくれる。 「あんたなぁ……」 「え? ちょ! うわああああ!」  廊下だっつうのに、スーツもシャツも全部、まだ着たままだっつうのに、強引にひん剥いて、玄関からすぐそこのところで無我夢中になって襲い掛かるぞ。 「た、高雄」 「……すげぇ」  でも、今は呆れるほど優しく甘く、あんたのことを抱きたい。涙と甘い蜜でトロトロにふやけそうなくらい全身が濡れるほど、甘ったるいセックスをしたい。 「愛してる」  好きよりもっとすごく、愛しい気持ちも、この熱も、衝動も、全部を含んだ言葉はこれだろ。「愛してる」なんてきっと日常じゃほぼ使わない。俺は今まで一度だって言葉にしたことはない。心底、身体が震えて、好きだと感じるほど誰かのことを思ったことがないから使ったことがない。  生まれて初めて使った言葉。 「っ」  その言葉を使うなんて思ってもみなかった。ものすごく気恥ずかしくて照れくさかったけど、要がものすごく嬉しそうに笑って泣いて、その白い手を俺に真っ直ぐ伸ばしたから、照れるよりも、この人への愛しさが勝って、きつく抱き締めていた。 「あっ! ン、高雄っ! ぁ、やぁっ」  くちゅりと甘い音が部屋に響いた。二本の指は美味そうに要の中にしゃぶりつかれてる。たっぷり濡らして、たっぷり柔らかく解して、痛みなんてほんの少しだって感じさせないくらい、ただただ、気持ち良くて甘くて美味いセックス。 「あ、ン、や、ぁ……ら、ダメ、乳首、おかしくなりそうだ」  ツンと尖った粒は舌先で突付いて、その硬さをたっぷり味わってから、またひとつキスマークを残した。もうすでに、乳首の周りには赤い花を散らすようなキスマークが点々とついている。その中央で一番綺麗な色をした乳首を摘んで、指でこねると、二本の指をきゅっと要が締め付けて、そのままうねるように絡みついた。 「あ、も……高雄」 「要」 「んんっ、ン……ん」  唇を重ねると、甘えた声を溢しながら、俺の舌を一生懸命に追いかける。 「っぷは」  気持ち良さそうに潤んだ瞳はたまらなく綺麗で、この瞳から零れる涙は本当に宝石なのかもしれない。  知らなかった。自分がこんなに強欲だったなんて。 「や、ぁ……また、乳首っ」  こんなに綺麗な人を俺は独り占めしたくてたまらないんだから。  顎、首筋、鎖骨、順々にキスで辿っていくと、要が肩を竦めた。チラッと視線を要へ向ければ、真っ黒な瞳が真っ直ぐ俺を見つめてる。 「あ、ぁっ、やぁぁっン」  キスはもっと下へと降りて、ほんのり色づく肌の上に点々とキスマークをまた散らしながら、もっと下へ。もっと。 「ひゃあああっ……ン、ぁ、高雄っ、歯が」  もっと下、気持ち良さそうに濡れたペニスの根元に、濃い赤色をした印をつけた。歯を立てて、肌を齧って、先走りで湿った肌の上に、キスマークと歯型が次から次に残っていく。吸ってみると、小さな甘い悲鳴が頭上から聞こえた。 「要のここ汁だく」 「あ、言うな、ぁっ、あぁン、ぁ、ダメ、っんん」  いつも以上に敏感で、気持ちイイって全身で伝えようとしてる。 「だって、ぁ、高雄、好き」  掌で握り締めるとくちゅくちゅって濡れた音がする。つるりと滑るペニスを少し強く扱くと、二本の指に要の粘膜が甘えるようにしゃぶりついた。指なのに。 「あ、も、ダメっ、高雄」 「か、なめっ」  指なのに、こんなに甘く切なくきつくしがみ付かれて、頭の芯が痺れてくる。そして、その指で前立腺を押して、擦ってやると、もっとって要の奥がざわついた。 「ぁ、ンっ、ぁ、あっ、ダメっ、イっ……あぁぁぁっ」  要がたまらない表情をした。 「ン、高雄、お願い、だ」 「な、に?」  ホント、指なのに、あんたの中にあると、なんでこんなに気持ちイイんだろうな。最初っから、そうだった。俺は、こんなセックスは知らない。こんな無我夢中になって、何も考えられなくなるセックスなんてしたことねぇよ。 「お願い、もう、イってしまいそう、なんだ、だから……ン、指じゃないのが、いい」  仕事の時はすげぇ有能で、優秀で、誰よりもしっかりしていてミスなんてありえない完璧な人。それなのに俺の前でだけは可愛くて、綺麗で、すげぇおっちょこちょい。あと、そうだ、あんたはおねだりが。 「ここ……ン、ぁ、高雄」  大きく足を開いて、たっぷり濡らされて、たっぷりほぐされた柔らかくやらしい孔の口を見せ付ける。白い指は今だけ快感の色に染まって、キスマークを散りばめた肌の上を愛撫みたいにまさぐってから、歯型までついた太腿の付け根を撫でた。一番奥の、誰も、俺以外は触れたことも見たこともない箇所を自分の指で割り開くと、孔が物欲しそうにヒクついてるのが見えた。 「高雄……あン」  要はおねだりが、さ。 「お願いだ。ここに早く来て、くれ。高雄の欲しい……ン」  火照った色をした指先でもっと大胆に身体の奥を見せながら、切なげに俺だけを見つめるこの人は、俺のツボを苦しくなるくらいついてくるから。 「奥まで来て。高雄、の、で、イきたい」  おねだりが、たまらなく上手いんだ。

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