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第8話

「僕、どうしても古文が苦手なんだよねー。 頭にすっと入っていかない…」 「俺はその文章が一つの写真みたいに浮かんでくるよ。 その時の風景というか情景というのか。」 「ふふっ、日向って、案外ロマンチストなんだね。」 「ばーか、おちょくるなよっ。 んー、例えばさ、この『聞こえまほしき』っていうのは…」 説明しながら、つい瑞季の方へ身体が寄っていく。 顔が近付き肩が触れそうになった。 はっと気付いた時には、お互いの視線が絡み合い逸らせない。 瑞季の瞳は真っ直ぐに俺を写している。 「瑞季…」 俺は引き寄せられるように、自然と瑞季の唇に寄っていき… バターーン ガチャッ 「たっだいまーーーっ」 ドタドタドタ 「ひなたーぁー!誰かいるのー?」 朝陽だっ! 瞬間、ひゅっと距離を取って離れた俺達は、何事もなかったかのように、教科書に目を落とした。 ガチャ 「あっ、瑞季来てたんだ。いらっしゃい。」 「お邪魔してます…」 「ねぇ、俺も混ぜてよ。瑞季、数学得意だよね、俺、わかんないとこあるからさ。」 「うん、じゃあ一緒に。」 バカ朝陽。邪魔すんなよ。 でも、さっき、俺キスしようとしたんだけど、瑞季逃げなかったよな…

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