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第12話

「…自分で食べる…」 「いいじゃん、このままで。 はい、あーん。」 熱のせいか潤んだ瞳でキッと睨まれたが気にしない。 瑞季の口元へ、もっとスプーンを近付ける。 「早くしないと溶けちゃうよ。」 瑞季は観念して小さく口を開けた。 「…冷たくて、美味しい… それと… 来てくれて…ありがとう…」 俺は瑞季の言葉に舞い上がったが、理性をフル活動させて平静を装い、アイスを食べさせると氷水で頭を冷やしたり、スポーツドリンクを飲ませたりと、甲斐甲斐しく世話を焼いた。 瑞季も大人しく俺の言うことを聞き、というより熱でダルくて動けなかったせいもあるのだが、俺のなすがままになっていた。 ピンポーン 「あ、お袋だ。」 玄関のドアを開けると荷物を抱えたお袋がいた。 「はい、お助けマン登場!瑞季君、熱はどう? 病院行こうか?」 「…涼香ママ!どうして? 動くのしんどいんで様子見てからにします。」 「俺が呼んだ。栄養のあるもの作って持ってきてもらった。」 「えっ…そんな…迷惑かけて…」 「気にしない!美味しいもの食べて早く元気になる! 昨日から食べてないんでしょ? 今あっためるからスープ飲みなさい!」

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