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第20話
心臓がバクバクしてきた。
当の日向は、あー言っちまったよ、やっべえな とかなんとか言いながら、カバンからゴソゴソと教科書かなんか取り出す音がした。
『好き』
って、友達とかじゃなくって、恋愛のそっちの方?
僕の…片思いじゃなかったってこと?
日向…僕だって、僕だって…
熱で振り切れた頭の僕は、正常ではなかったんだと思う。
かばっと布団から飛び起きると、びっくりした日向の前に座り込んで真っ直ぐに見つめて尋ねた。
「ねぇ、今、なんて言った?」
「えっ、えっ?今?…別に…」
しどろもどろになって、視線も宙に浮いている。
僕は日向の頬を両手でガシッと挟み、顔を近付けて
「僕、はっきり聞こえた。
『瑞季…好きだ』って。
それって…僕のこと、恋愛対象で見てくれてる ってことだよね?
ね、そう受け取っていいんだよね?」
熱と高ぶった感情のせいで、じわっと涙が出てきて、視界がぼやけてくる。
食い入るように僕を見ていた日向は、ふうっと大きく息を吐くと
「…ごめん、気持ち悪いよな、ごめん…
そうだよ、お前のこと、友達としてじゃなく…好きなんだ。
一目惚れだった。
にっこり微笑んで俺に声を掛けてきたお前に。
こんな綺麗なヤツがいるんだって思って。
一緒にいるうちに、穏やかで、優しくて、芯は強くて、泣き虫で、頑張り屋で一生懸命なお前が ますます好きになった。
周りから囃されて否定しなかったのは…うれしかったからだよ。
お前の恋人だって暗に認められたみたいで。
性別がどうとかじゃなくて、俺は「坂本瑞季」か好きになったんだ。
ごめん、男に告られても気持ち悪いよな。
お袋にきてもらうわ。」
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