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第51話

半分上の空で仕事をこなし迎えた週末、 日向と僕は、スーツをビシッと決めたものの、ド緊張MAXで日向のお父さんの前に正座していた。 涼香ママから事前に聞いているであろうお父さんは、口を真一文字に結んだまま 黙って座っている。 「あらあら、みんな固まっちゃって。 ほーらー 臣さん、威嚇しないの!」 涼香ママは、お父さんのことを『臣さん』と呼ぶのだ。 臣さん と呼ばれたお父さんは、 「そんなつもりはないんだけど」と小声でボソボソ呟いた。 涼香ママが三人の前に茶器を置いて、お父さんの横に座った。 「日向、瑞季君。 お前達の考えを聞こうか。」 日向は深呼吸を一つして切り出した。 「俺達は、付き合い出したのは高校の時で… その頃から、生涯を共にしていきたいと思っていました。 俺は性別を超えて、瑞季だから好きになって、瑞季だから一緒に生きたい。 世間の偏見や誤解や… クリアしなければならないことも沢山あるのはわかっています。 みんなに受け入れられるとは思っていません。 それは重々覚悟しています。 親父とお袋には申し訳ないけれど、後悔したくない。 今の法律では、同性同士の結婚はできないから、養子縁組を結ぶことになる。 俺の方が二ヵ月早く産まれたから、瑞季が西條の家に入ることを 俺達の結婚を許して下さい。」 一気に伝えて頭を下げる。

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