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第52話

横にいる僕も一緒に頭を下げる。 「瑞季君はどうなんだ?」 失礼します と言って頭を上げた僕は、緊張の解けない面持ちのまま真っ直ぐお父さんの目を見る。 「僕も日向君と気持ちは同じです。 何度も…この想いを諦めようと思いましたが、自分の心に嘘はつけませんでした…。 僕は男で、お二人に孫の顔をお見せすることはできません。 本当に申し訳ありません…… 僕達の将来は前途多難かもしれません。それも僕なりに理解しているつもりです。 でも、日向君を愛する気持ちは誰にも負けません。 どうか、どうか僕達のことをお許し下さい。 お願い致します。」 頭を下げ続ける僕達の頭上に ふぅー っと大きな溜息が落ちた。 「頭を上げなさい。」 お父さんは、僕達二人の顔を交互に見た後、こう言った。 「俺はそういう男同士の色恋ごとに偏見はない。 でも、母さんから聞いた時は、正直倒れそうになった。 まさか自分の息子が…ってな。 これでも俺なりに理解しようといろいろ勉強したんだぞ。 二人の気持ちはわかった。 でも、お前達が思っているほど簡単な道ではないぞ。 それを承知の上で、二人の想いが変わらないなら、俺達も覚悟を決めて応援しよう。 瑞季君、日向の嫁に来てくれるか? 結婚式もあげるといい。ツテがあるんだ。」 ちょっと照れ臭そうに頭を掻きながらお父さんが言った。

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