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第53話
一気に全身の力が抜けた。
あっさり許してもらえるなんて…
『日向の嫁』?『結婚式』?
日向と共に生きること、許してもらえた?
本当に?僕で…いいの?
じわっと視界が霞んでくる。
日向を見たら…目をウルウルさせて僕を見て頷いた。
「「ありがとうございますっ」」
もう一度深々と頭を下げ、大きく深呼吸をして姿勢を正す。
いただきます…小さな声でそう言って、カラカラになりくっつく寸前の喉を潤そうと蓋を開けると…
ふんわり甘い香りが漂い、茶器の中に薄いピンクの花が浮いている。
「桜茶…涼香ママ、これ…」
僕は涙目で涼香ママのほうを見た。
それまで黙って成り行きを見守っていた涼香ママが、にっこり微笑んで口を開いた。
「ええ、そうよ。桜茶。
お祝いやおめでたい時にお出しするの。
せっかくだもの。入れ替えてくるわね。」
感情が高ぶり、僕の身体が震えている。
耐えようとした嗚咽が次第に大きくなる。
日向が肩を抱き寄せ、固く握った僕の両手にそっと手を添えた。
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