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第54話

後日、受け取った名刺を頼りに、日向と二人で訪ねたのは、お父さんの友人という 橘さんの家だった。 「日向君、大きくなったな。君が瑞季君か。初めまして。 さあ、どうぞ。」 同性カップルが共に人生を歩んでいく上で、具体的に聞きたいことがたくさんあるだろう と、結婚式の打ち合わせを兼ねて、家に招いてくれたのだった。 「式場での打ち合わせだと聞きづらいこともあるかと思ってな。 あ、これは俺の大事なパートナーの遥。」 「ようこそ!なんでも聞いてね。 俺達でよければ、力になるから。」 「「よろしくお願い致します!!」」 橘さんの隣の、優しい微笑みをたたえた男性… 僕達も、数十年後には こんな風になっていたいな…と思わせる二人。 二人を包むオーラが優しくて、暖かくて…口には出せないようなことも きっと二人で乗り越えてきたんだろうな… 時間の経つのも忘れてすっかり話し込んでしまった。 隼人さんと遥さんは、僕達がそれぞれに抱えていた思いを一つ一つクリアにしていってくれた。 僕はだんだんリラックスして、安堵の表情に変わっていくのがわかる。 そして 結婚式は涼香ママの体調を考えてできるだけ早く。 できれば日向の誕生日に。 早速、大まかに決めた 衣装合わせや細かい段取りのために式場に伺う約束をする。 日向も僕も家族以外の心強い味方を得て、嬉しくて、厚く謝しマンションを後にした。

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