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第56話

背中越しに日向に抱かれて、あまりの恥ずかしさに日向の手を抓る。 いたたたっ と大袈裟に手を振って僕を睨む日向に、みんなが大笑いする。 コンコン ノックの音が。 「お時間でございます。ご案内いたします。」 緊張しながらチャペルへ向かう。 式には日向のご両親と朝陽君、日向のいとこの茜さん。 高校時代からの悪友達…大河、湊、諒太、優一。 日向の上司の岡田部長さんと奥様、僕の上司の片岡課長と同僚の峰君。 隼人さんと遥さんも来てくれた。 みんな僕達のことを理解し応援してくれている人達だ。 淡い柔らかな光の射し込む祭壇の前で、震える声で誓いの言葉をかわす。 ずっと首からかけていたリングも今日からは堂々と左手の薬指に。 誰に何を言われても、何をされても構わない。 僕達を理解してくれるみんなのサポートを受けながら、日向と二人、手を取り合って真っ直ぐに前を進んでいこう。 この手は絶対離さない。 心の中で叫ぶ。 『ありがとうございます。 この世の全てのものに感謝します。 僕と日向を会わせてくれて本当にありがとうございます…』 厳かな雰囲気の中、最後の賛美歌が流れ、恙無く式が終了した。 ライスシャワーの中、みんなの笑顔が弾ける。 僕はなんて幸せなんだろう。 どうか、みんな幸せになりますように… 祝福の鐘の音が 金木犀の香りと共に空に舞い上がった。

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