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第57話

僕達はみんなに見送られ機上の人となり、北海道へと旅立った。 そう、新婚旅行だ。 土日の連休と祝日を利用し、二泊三日の計画で。 後二日は片付け等のために有休を取った。 今まで度々二人で旅行にも行ったけれど、やはりそれとは違う高揚感が溢れている。 養子縁組の手続きを済ませて、僕は正式に西條家の息子となった。 書類上は日向と義兄弟になったのだ。 一応『家族』として認められ、これから何があっても法律上はその扱いを受けることができる。 左手の薬指のリングは…その存在をアピールしており、名実ともに『日向の側にいてもよい』と言われてるみたいだった。 「あー、着いたぁ…瑞季、疲れてないか?」 「うん、大丈夫。日向こそ大丈夫?」 「平気だよ。落ち着いたら、晩飯食いに行こうぜ! ウニ、いくら、ホタテ…あー、腹減ってきた!」 「式の後も緊張してて、ほとんど口にしてないもんね。 僕もお腹空いたー!」 「じゃあ、急いで行こう!」 受付も一般の人たちとは別、コンシェルジュがついて案内してくれる。 日向が早速チェックインを済ませ、何か違う雰囲気にもうその時点で僕はドキドキそわそしている。 超有名ホテルの最上階のエグゼクティブと呼ばれる部屋。 日向、どれだけ奮発したの? 金額聞くのが恐ろしいよ。 すごい!窓から街並みが一望できる。 見下ろす家々に暮らす人達の中にも、僕達と同じような想いをしている人がいるのだろうか思うと、何だか不思議な気分になってきた。 きっと夜景も美しいんだろうな… でも、男二人でスイートなんて、変に思われなかっただろうか。 ウエルカムドリンクの冷えたシャンパンまで… この旅行は全て日向に『俺に任せろ!当日まで秘密だ』と、詳細を教えてもらえなかった。 そんな危惧も一蹴するように日向が 「どうだ?なかなかいい部屋だろう。」 とご満悦だ。 「ねえ、日向…男同士でスイートなんて…大丈夫だったの? それに…ここすっごい高いとこじゃん。いくらしたの?」 「当たり前じゃん! おい、瑞季。俺達、新婚さんだぞ! 誰にも文句は言わせない。 それと 新婚旅行にかかる費用はお前が心配することじゃない。夫の俺が好きでやることだから、黙ってついて来い。」

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