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第59話
支度を済ませると、腹の虫を黙らせながら、コンシェルジュおススメで、インターネットやガイドブックに載ってる口コミも売り上げもNo.1のお店へ向かう。
うわー、賑やか。すごい人。
観光客やら地元の人やらでごった返している。
待ち時間も気にせず、美味しい料理に舌鼓を打つ。
さすが本場の味!新鮮で美味い!
なんでその場で食べるとこんなに美味しいんだろう。
カニ、いくら、ホタテ、ウニ…海鮮を中心にあれやこれや食べたいものを注文する。
日向も僕も箸が進んで止まらない。
食べ過ぎて満腹の腹ごなしに散歩してみる。
定番の藻岩山へロープーウェイで上がると、ちょうどマジックアワーと呼ばれる時間に掛かって、夢のような美しい風景が広がっていた。
「すごい…キレイ…日向、連れて来てくれてありがとう。」
そっと腕が触れ合うくらいに近付くと、日向に肩を抱かれた。
「??日向?ここはヤバイよ!外だよ、外!」
問答無用で抱き寄せられる。
「みんな自分達のことに夢中で、誰も人のこと気にしてないからいいんだよ。
瑞季…二人でこうやって同じ空気を吸って、美味しいもの食べて、キレイなものを見て…幸せだ…
これからも、もっともっと幸せにしてやるから、一緒に歩んでいこうな…
愛してるよ、瑞季…」
僕はイエスと答える代わりに、そっと日向の肩に頭を預けた。
うれしくて切なくて涙が溢れて止まらない。
震える肩に力が込められる。
ひんやりとした風に吹かれながら、すっかり日が落ちてしまうまで、二人でそれをずっと見つめていた。
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