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第68話

「日向、こんなステキな部屋をありがとう。 ホントに…夢みたいだ。 こうして一緒にいられることが… 明日も目一杯楽しもうね。」 「夢じゃない。もう、現実だよ。 …明日も観光地と美味いものが待ってるぞ。」 「じゃあ、ちゃんと寝とかないと… お休み、日向。」 僕はグラスをことりとテーブルに戻して、布団に潜り込んだ。 「瑞季…このまま眠れると思ってんのか?」 「えっ?」 「朝まで啼かしてやろうと思ってんだけど。」 僕は、がばっと飛び起きた。 「無理無理無理無理無理っ!! これ以上は無理って! 明日動けなくなっちゃうから、ダメっ! せっかくの旅行なのに、ずっとホテルなんてやだっ!」 涙目で訴えて、なおかつ日向を睨みつける。 ちょっと寂しそうな目をして、ふうーっ と日向が大きく息をついた。 「…冗談だってば。 そんなに拒否んなくってもいいじゃん。 …ったく、なんだよ、もう…」 「それは僕の台詞だよ。 そんな意地悪しなくってもいいじゃん。 …でも、僕の言い方キツかったよね、ごめん。」 日向の胸に猫のようにすりすりと擦り付いて、ご機嫌直しをしてみるが、日向はまだ難しい顔をしている。 一旦ヘソを曲げると元に戻すのに時間がかかる。 なんたって『ワガママ王子』だから。 これだけ付き合ってる期間が長いと、トラブルが起こった時の懐柔法もお手の物だ。 こうなったら、ひたすら甘えまくって下手に出るしかない。 二人っきりの甘い『新婚旅行』を無駄にしたくないし。

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