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第77話

日向は当たり前のようにチェックインし、フロントマンも何事もないように受付を済ませ、丁寧に案内してくれる。 僕だけが、そわそわと落ち着きのない素振りで、視線を泳がせていた。 「うわー、ステキな部屋!すごい!」 インテリアやベッドカバーは全て(はり)と同じ濃いチョコレート色で統一され、壁の漆喰の白とのコントラストが落ち着いた雰囲気を醸し出している。 窓からは上半分きらめく星空が手に取れるように煌めき、その下はきっと明日明るくなれば広大な山々が眺められるのだろう。 部屋も…広い。 日向…また張り切っちゃった? 「温泉、この時間貸切にしてるから一緒に行こう! 今日は目が覚めてから冷や汗かいて、歩いて走って馬にも乗ったから、汗だくだし。 いい感じで腹も減ったしな。」 さっさと用意を済ませて日向が部屋を出ようとするのを引き止めて、慌てて僕も日向に続く。 「なんで貸切にしたかわかる? 夕べさ、あちこちつけ過ぎちゃったから…」 廊下を歩きながら、日向が小声でささやく。 途端に僕の頭が噴火しそうになった。 『つけ過ぎちゃった』って… 唇が触れたところが時々痛痒かったよ、確かに。 まさか、全身…? 裸になって、鏡を見て唖然とした。 ナニコレ? 身体のあらゆるところに小さな赤い(あと)が…花が咲いたように散らばっている。 「日向…これ…」 咎めるように軽く睨んで尋ねると 「お前がかわいすぎるのがいけないんだ」 と平然としている。 もう、この暴君! はあーっと溜息をついてシャワーを浴びると、檜造りの浴槽に身を沈めた。 体温が上がり、ますます赤い花が咲き誇る。 「キレイだな…今日も満開に咲かせてやるから。」 魔王が満面の笑みで呟いた。

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