78 / 229

第78話

夕食は、地元の食材をふんだんに使ったカジュアルフレンチ。メインは和牛のポアレ。 「フルコースは緊張するよね。」 「あぁ。でもお前の食べ方綺麗だから羨ましいよ…上品だよな。どこで習ったんだ?」 「えっ、上品って…。料理教室に通ってた時に教えてもらったんだよ。」 「料理教室?通ってたのか?気付かなかった….一体いつの間に?」 「大学二年の時。 日向に食べてもらうのにレパートリーが少なくって悩んでて…それで。」 「俺のために?…そう言われてみれば、格段に料理が上手くなって凝ったもの作るようになってたよな…あの頃か…」 「うん。少しでも美味しいもの食べてもらいたくて。っていうか、日向の胃袋がっちり掴んで僕から離れられないようにしたくって。」 ふふっと笑う僕に、日向が真っ赤になって口元を押さえた。 「日向?」 「…ヤバい…瑞季…お前、かわいすぎる… このまま押し倒したい…」 「えっ…」ぼふっと顔が赤くなる。 急に気まずくなって二人して沈黙して、黙々と食べていると 「西條様、失礼致します」 「何でしょうか?」 「特別な記念日だと伺いましたので、当館のオーナーからプレゼントでございます。 もしよろしければ御賞味下さいませ。」 と、カートに小ぶりのケーキとシャンパンを載せたウェイターが、にこやかに立っていた。 「え?ホントですか?うれしいな。 ぜひ、いただきます。オーナーさんにどうぞよろしくお伝え下さい。」 「承知致しました。では…」

ともだちにシェアしよう!