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第79話
ポンッ
と、小気味いい音と泡を立てて、シャンパンがグラスに注がれていく。
「どうもありがとう。」
「いいえ。どうぞごゆっくりお楽しみ下さいませ。」
「ねぇ、日向、すごいサービスだね。
『特別な記念日』って伝えてたの?なんだか恥ずかしいな…まぁ、スイートに泊まる時点で、そういう関係だってバレちゃうけどね…」
「だって、俺達にとっては特別じゃん。
でも、こんなサービスあるとは思わなかったな。
さ、瑞季。
俺達が一生、愛し合って共に歩んでいく誓いを立てたことに、俺達の未来に…乾杯。」
「…乾杯…」
カチン
「美味しい…僕、本当に幸せだよ、日向。」
「だから、ずっとさ、もっと幸せにしてやるって言ってるじゃないか。
まぁ、時々は啼かすけどな。ふふっ。」
ぐふっ
思わず吹きそうになった。なんてこと言うんだよっ!
慌ててナプキンを口元に持っていき、ケホケホとむせてしまい、その咳込みが治ると、日向を軽く睨んで牽制する。
「日向っ、もう、止めてよね!なんなら、今日は別々に」
「うっ、ごめん!悪かった!瑞季、許して?」
「そんなあざとい顔しても許さないんだからね。」
「んー、どうしたら許してくれるの?」
「…優しくしてくれるなら…」
「わかった。蕩けるくらい優しくしてやる。」
んぐっ
これ以上話したら、ここでとんでもないことを言い出しそうだ。
僕は、ぷしゅーっと頭のてっぺんから何か噴き出しそうで、顔を真っ赤にしたまま、ただ黙々とデザートまで平らげた。
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