80 / 229
第80話
日向のせいで、せっかくの料理も最後のほうは味がわからなくなっていた。
黙ったまま部屋に入り、鍵を掛けた瞬間、日向が僕の前に跪いて右手を差し出した。そう、姫にプロポーズする王子のように。
突然の行動にびっくりして立ち竦む僕に
「私、西條日向は、一生 西條瑞季を愛して止まないことを改めて誓います。
だから…
この手を離さないで…」
あまりの真剣さに、僕はゴクリと唾を飲み込むと、そっとその手に右手を重ねた。
「私、西條瑞季は、病める時も健やかな時も、西條日向を愛し続けることを改めて誓います。
愛してると言って…抱きしめて…」
ぐい と重ねた手を引き寄せられ、僕は日向の胸に倒れ込んだ。
「誰が離すもんか。お前は俺のものだ。
瑞季…愛している。」
見つめ合って…キス。
次第に荒くなる息と、心臓の鼓動。
絡め合う舌が生き物のように蠢く。先程のシャンパンとケーキの味がする濃厚なキスで、僕は頭がクラクラしてきた。
日向が僕を横抱きにすると、ベッドへ そっと横たえた。
愛おしそうに、僕の乱れた髪を撫で付け、その手が頬から顎へ移動している。くいっと顎を持ち上げられて、またキス。
そうしながら、日向の手は僕のカーディガンを脱がせ、シャツのボタンを一つ一つ丁寧に外していた。
見えないのに器用なことを…ぼんやり考えているうちに、いつの間にかベルトを外しスラックスのジッパーを下ろして…
ピタリと日向の動きが止まった。
「瑞季…これ…どうしたの?」
日向の手が僕の下着のラインを撫でていた。
ハッと気付いた僕は
「あ…遙さんからのプレゼント。
『花嫁さんだからかわいくね』って…昨日はバスローブのままで見せれなかったから、今日は…」
「かわいくて、エロくて…似合ってる…
ちゃんと見せて…」
それは手の込んだ総レースの白いビキニ。
日向は人差し指でそっとその縁を辿っていく。
ともだちにシェアしよう!