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第96話

「…出発までここで休もうか。ごめん。自制が効かなくて…マジで抱き潰したな。 声も出なくなって…ごめんな、瑞季。」 日向は僕の頭を撫でておでこにキスをすると、横になるのを手伝ってくれ、チェックアウト変更を告げるため内線をかけ始めた。 そして手に何かを持って僕の側に来ると 「瑞季、ちょっと冷やっとするけど我慢してね。」 ぴらりと布団をめくり、僕の腰にペタペタと貼っていく。 冷たっ!ん?湿布? 「(日向…どうして湿布持参してるの?)」 「こんなこともあろうかと…持ってきた…」 うわっ…確信犯… 最初からこういうことになるの予想してたんじゃんかっ! 横になったままジト目で日向を見ると、視線を逸らして、ごめん…と呟いた。 その顔がかわいくて、思わずくすりと笑うと、口をへの字にしてむくれてしまった。 突然チャイムが鳴り、何事かと思っていたら、ルームサービスで朝食が運ばれてきた。 「せめてここで食べさせてやろうと思って…」 申し訳なさそうに日向が言った。 自分で食べるから…と言うのを拒否し僕に食べさせようとする日向に諦めて、僕は小鳥の雛のように口を開けては、日向が食べさせてくれるものをゆっくりと咀嚼した。

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