96 / 229
第96話
「…出発までここで休もうか。ごめん。自制が効かなくて…マジで抱き潰したな。
声も出なくなって…ごめんな、瑞季。」
日向は僕の頭を撫でておでこにキスをすると、横になるのを手伝ってくれ、チェックアウト変更を告げるため内線をかけ始めた。
そして手に何かを持って僕の側に来ると
「瑞季、ちょっと冷やっとするけど我慢してね。」
ぴらりと布団をめくり、僕の腰にペタペタと貼っていく。
冷たっ!ん?湿布?
「(日向…どうして湿布持参してるの?)」
「こんなこともあろうかと…持ってきた…」
うわっ…確信犯…
最初からこういうことになるの予想してたんじゃんかっ!
横になったままジト目で日向を見ると、視線を逸らして、ごめん…と呟いた。
その顔がかわいくて、思わずくすりと笑うと、口をへの字にしてむくれてしまった。
突然チャイムが鳴り、何事かと思っていたら、ルームサービスで朝食が運ばれてきた。
「せめてここで食べさせてやろうと思って…」
申し訳なさそうに日向が言った。
自分で食べるから…と言うのを拒否し僕に食べさせようとする日向に諦めて、僕は小鳥の雛のように口を開けては、日向が食べさせてくれるものをゆっくりと咀嚼した。
ともだちにシェアしよう!