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第101話
第五会議室のドアをノックする。
「どうぞ。」
「失礼します。」
人事の高木部長が待っていた。
「部長、お話って何でしょうか?書類の手続きで何か不都合な点でも?」
片岡課長が尋ねると
「不都合?
…西條君、君は結婚したと聞いてるが、提出してもらった戸籍謄本には、養子縁組になっているが、どういうことなんだ?
まさか…同性婚?そうなのか?」
えっ…バレた?認めるしかない。
「…はい。おっしゃる通りです。」
「片岡課長、これが取引先に知れたら、どういうことになるかわかってるのか?
いや、社内的にも問題だよ。どう責任取るつもりだ?
何なら彼に辞めてもらってもいいんだよ。」
「お言葉ですが、プライベートなことと仕事とは全く関係ないと思いますが。
彼の仕事ぶりを見ていたらわかりますよ。得意先との関係も良好ですし。
それにそのようなことでうちとの契約がどうにかなるなんて思いません。
責任なら私が取ります。御心配なく。
うちの部長が不在の間は、私が部長代理として一任されていますから、役職を振りかざすおつもりなら、私も同等に意見させていただきます。よろしいですね?
それに…常日頃おっしゃってますよね?
『仕事にプライベートを持ち込むな。
割り切って仕事をしろ』
部長のモットーで毎年入社式にもお聞きしておりますが?
さっきおっしゃったとことと、相反する考えですよね?
同性婚の何が悪いんです?
誰にも迷惑かけてませんよっ!あなたに何か揉め事でも降ってきましたか?
名字が変わるのが、仕事とどんな不都合があるんですか?
もしそんなものがあるなら、結婚して名字が変わる人間は、みんな『問題だ』と言われなくちゃいけないんですかね?
一体何の不都合や問題になるとおっしゃるんですかっ!」
「うっ…確かにそう言っているが…
あんたはおかしいと思わないのか?
そんな人間に外に出てほしくないし、関わり合いたくないね。」
「何がおかしいんですか?
そういうのを『古い頭』とか『時代錯誤』って言うんですよ。
『そんな人間』ってどういう意味ですか?
時代は進歩してるんです。
人の恋愛事情に他人がどうこう口を挟む筋合いはありませんよっ!」
睨み合う二人の間で僕はオロオロと黙って見ているしかなかった。
課長…カッコいい…
いや、そんなこと考えてる余裕なんてないんだって!
僕を庇ってくれる課長の立場が悪くなる…どうしよう…
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