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第102話

どうしよう…このままだと片岡課長が…どうしよう… 僕が辞めれば治まるのか? 『退職します』と言いかけたその時… ノックの音とともに 「失礼します」 ヒールの音も高らかに部屋へ入ってきたのは、庶務二課の浅井課長だった。 「すみません。大きな声でしたので、ドアの外にも全部聞こえていますよ。 社内にいる人間、興味津々で ここの廊下に勢ぞろいです。 それに…今のお二人の会話、外から広報担当が社内放送かけてます。 ぜーんぶ丸聞こえですわ。もちろん社長にも。 高木部長ともあろうお方が、人権無視も甚だしいですわね。 高木部長、外に出せない、辞めてもいいなんておっしゃるなら、西條君をうちに下さい。 ちょうど一人結婚退職予定で欠員が出ますし、機械に強くて手の早い、デキる子が欲しかったんです。 ね、片岡君、西條君の代わりに支店から呼び戻せる適任の社員がいるでしょ? 部長、その辺は調整して下さいよね。 西條君、うちの課にきてちょうだい。 営業と違うから物足りないかも知れないけど、みんな喜んであなたを迎えるわよ。 部長、これで『問題ない』ですよね?」 ふん、どうだとばかりに浅井課長が微笑む横で、高木部長は苦虫を潰したような顔をしていた。 片岡課長は、してやったりと、こちらもドヤ顔で笑みを浮かべていた。 「まーちゃん、ありがとう。」 外から大きな歓声と拍手があがった。 え?みんなが聞いてる?ドアの外も…社内放送?

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