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第103話

後で聞いた話によると… 会議室前に押しかけた面々と突然始まった社内放送で、社内のあちこちで僕のことで話が盛り上がって、みんな午後からの仕事に手がつかなかった…そうだ。 もともと高木部長は、自己中で意地悪な性格で敬遠されていたのだが、今回の件でますます評価が下がり、男女問わず白い目で見られるようになったらしい。 反対に僕を全面的に擁護してくれた片岡課長と浅井課長の男前な株が急上昇して、『社内も自由に歩けない』とボヤく羽目になってしまっていた。 当然のことながら社長の耳にも入ったらしいが、片岡課長の力説が功を奏し『あまりみんなを刺激しないように』とだけ言われて、何のお咎めもなかった。 うちの課では、峰君が必死で擁護してくれたのも大いにあるが、それ以前に『あいつなら、それもアリだな』と割とすんなり受け入れてくれたらしい。 秋山さんに至っては…『なんだ…ゴリ押しして手に入れときゃよかったな』と課内でドン引きされる発言をしたとかしないとか… 一部、非難めいたことを言った男性社員には、女性達がこぞって反発し、コテンパンに口論で態度で叩きのめした…とも聞いた。 そう、なぜか庶務二課の浅井課長を筆頭に全女性が僕の味方についてくれたのだ。 その後、僕を否定するような言動をした高木部長を始め男性社員数名に対しては、女性陣が仕事上のフォローをせず無視した結果、コピー取りからお茶汲みまで全ての業務を自分でこなさなければならなくなり、彼らは涙目で仕事をするという大変な騒動にまで発展してしまったのだった。 おまけに完全に無視された挙句、バイ菌でも見るような視線でずっと見られ、こそこそ悪口を言われ、散々な目にあってる…らしい。 時々部長の姿を見かけたが、日増しに心労で痩せていったようだった。 僕のせいで申し訳ないことに… とにかく片岡課長と浅井課長には、足を向けて寝られないくらいに、大変なご迷惑をかけてしまって…あんなに守って庇ってもらうような価値が自分にあるのか、どうやって恩返しをすればよいのか、これからの自分の行動にかかっていると思うと身震いがする。 後にその騒動は『西條の乱』と、何とも不名誉な名前が付けられて密やかに都市伝説並みの扱いを受けたのだった。

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