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第111話
「そうそう、ちょうどよかった。
あなた達に渡したいものがあったの。」
涼香ママが僕達の前に、厚みのある銀行の封筒を一つずつ差し出した。
「お袋、これ現金?…俺と瑞季に?」
「お金はあっても困らないでしょう。
今後、何があるかわからないしね。
瑞季君、差し出がましくてごめんなさい。
でも、どうしてもあなたに、自分のために使ってほしかったの。
朝陽にも同じようにしてるから安心して。
臣さんも知ってるから。
私の大切な息子達へのプレゼント、嫌がらないで、私の最後のワガママだと思って受け取ってちょうだい。」
「お袋…わかった。ありがたく受け取るよ。
瑞季、お前も受け取ってくれ。」
「涼香ママ…ありがとうございます。
僕にまでこんな気を使って下さって…
大切に、大切に使わせていただきますね。」
「ええ、受け取ってもらえてよかったわ。ありがとう。
ねえ、今日は一緒に晩ご飯食べていってくれるんでしょう?瑞季君手伝ってくれる?」
「はい!実はそのつもりで…ママに聞いて買い物も行こうと思ってました。」
「じゃあ足りないもの買ってきてもらおうかしら。今日は鍋!カニ買ってきてね。」
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