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第115話

帰宅したなりの日向を捕まえて、片岡課長からの頼まれごとを伝える。 「ねぇ、僕はぜひ力になりたいんだけど…日向は?」 恐る恐る尋ねてみると 「いいじゃん!どんな人かはわからないけど、あの片岡さんが わざわざ言ってくるぐらいだから、イイ人達なんじゃないか? 俺も会ってみたいな。話進めてよ。」 「ホント?やったっ!じゃあ、明日声かけてみるね。」 やった!うれしいな。ワクワクする。 確か峰君と秋山さんと同期のはず… お昼にちょっと時間取ってもらおう! ニヤける僕は期待に胸膨らませながら、揶揄う日向を無視してキッチンへ向かった。 朝イチで片岡課長に喜んでお受けする旨を伝えると、 「相沢君にも伝えとくから、昼休み時間ずらしてランチルームに行ってくれるかな?」 との返事。 ドキドキしながらお昼休憩を少しずらして、『その人』の元へ向かう。窓際の二人掛けのブースに一人で座っている彼は、遠目からでもかなり目立っていた。 柔らかそうなハニーブラウンの髪が、窓越しの日差しを受けてキラキラ輝いていた。 近付くにつれて、はっきりとしてくるその顔は まるでお姫様のようで、男性に失礼かもしれないが『美人』という言葉がぴったり似合っていた。 ドキドキしながら思い切って声を掛ける。 「相沢さんですよね?初めまして…かな?僕、庶務二課の西條です。僕のせいで異動の件、ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありませんでした。」 「いや、それは関係ないから謝る必要はないよ。…えーっと… あっ、片岡課長のっ!!」 「はい。相席いいですか?」 「ええ、どうぞ。」 「うわー、相沢さんのお弁当、めっちゃ美味しそう! 愛妻弁当ですか? 僕もこんなに作れたらいいのに…」 「愛妻というか、愛夫ですけどね。くっくっ。 よければ味見しますか?」 「えっ、いいんですか?ではお言葉に甘えて… うっわー、おいしーーーい! これ、絶対教えてほしいです!」 感動しきりの僕は、自分が作ったのは恥ずかしいな… と、もごもご言いながら弁当を出した。 「西條さんのも美味そうじゃないですか。 これは、あなたが?」 「はい!相沢さんのお弁当とは比べ物になりませんが…」

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