148 / 229

第148話

日向は泣き笑いのような顔を(ほころ)ばせると 「瑞季…お前って最高…」 と呟き、すぐに僕を運んでくれた。 どうやら、僕の支度が終わるまでドアの向こうで待っててくれたようだった。 また抱き上げられてリビングのソファーに下され、横に座った日向に髪を撫でられる。 もう、いつもの日向に戻ったようだ。泣き腫らした顔だけが違うけど。 僕はどんな日向も大好きだよ。 それに、僕しか知らない日向がいる。 「瑞季…」 「ん?何?」 「お前、一見ひ弱そうに見えて、実はしなやかで強い。こんなに細くて儚げなのに、心が広くて何でも受け止めてくれる… 今まで俺は、お前を守ってきたつもりだったけど、そうじゃなかったんだな。 俺のワガママを受け入れ、俺を自由にして、お前が俺を守ってくれてたんだ。 俺は、お前と出会えて、お前とともに生きることができて…幸せだ。 ありがとう、瑞季。俺を選んでくれて…」 「違うよ、日向。 日向が僕を選んで守ってくれたんだ。だから、どんなことでも日向と一緒なら大丈夫なんだ。 僕なんかと一緒になってくれて…日向ありがとう。」 おでこをくっつけ合って、くすくす笑う。 こんなたわいもない行為の一つ一つがうれしい。 「日向…」 「ん?どうした?」 「まだちょっと腰が辛いから、横になりたい。」 「うっ…ごめん…今連れて行く。」 「楽になったら…さっきの続き…」 「?」 「僕に似合うの、一緒に選ぼう?」 ぼふっと音が出そうなくらいに真っ赤になった日向は、照れながら無言で僕を寝室へ運び、顔中にキスの雨を降らせて出て行ったのだった。

ともだちにシェアしよう!