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第163話

「…そうですよね。彼とは…きちんと話し合います。 でも、僕の気持ちは」 「わかってるよ。だから、この話は保留ね。 どうする?このまま、まーちゃんと話する?」 「はい。時間いただいてるので。」 「じゃあ、後で俺とまーちゃんとで話するから。 まーちゃんのとこ行っておいで。」 「課長、ハンカチすみません。お借りしてていいですか?」 「それくらいあげるよ。気にしなくていいから。」 「ありがとうございます。お時間取って申し訳ありませんでした。 では、行ってきます。」 深く一礼すると会議室のドアを閉めて大きく息を吐く。 申し訳なさに胸が潰れそうになった。 目と鼻を赤くしたまま、まーちゃん課長が待つ部屋のドアをノックした。 「はい、どうぞ。」 「失礼します。」 僕の話と退職届にまーちゃん課長は目を丸くして驚いて聞いていたが、片岡課長と同じことを言ってくれた。 「西條君。君には、私達皆んながついてること忘れちゃダメよ。 人間は一人では生きられないの。 誰かに頼って頼られて。お互い様なのよ。 片岡君と話してから人事に相談するわ。今のところは彼の言う通りに保留にしなさい。 この退職届は一旦預かります。 そして、大切な家族のことなんだから、遠慮しないで、お家できちんと話し合いなさいね。」 涙腺が崩壊した。 どうして、どうしてこんな僕なんかのために。 えぐえぐとしゃくり上げて泣く僕の肩を叩くと 「うちに来た子は皆んな大切なの。 仕事が嫌で会社が嫌なら仕方がないけど、一生懸命頑張ってる子には困ったことがあれば手を差し伸べる。 私も片岡君もそうなの。 だから、私達に任せてちょうだい。ね? 涙が治まってから戻ってらっしゃい。」 ひらひらと手を振ってまーちゃん課長は出て行った。 ありがたくて申し訳なくて、僕はまた一人で泣いた。

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