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第165話
こんな顔、日向に見られたら問い詰められる。
でも、ちゃんと僕の思いを伝えて話を聞いてもらわないと。
携帯が鳴った。日向からだ。
「あ、瑞季?俺。今晩さ、契約が取れたとこに急に書類を貰いに行かなきゃならなくなったんだ。遠方で遅くなるし晩飯いらないよ。
もし準備してくれてたらごめん。明日の朝食べるから。
何時になるかわかんないから、先に休んでて。
じゃあ。」
一方的に話を終えると電話は切れた。
ため息をついてソファーに座り込んだ。
「…相談…できないじゃないか…」
しばらくしてヨロヨロ立ち上がり、キッチンへ向かう。
とりあえず準備だけしておこう。ひょっとして『お腹空いた』って言うかも。
料理を作ることだけに専念して仕上げてしまうと、バスルームでゆっくりと過ごすことにした。
腫れた目元を冷やしながら、湯船に浸かる。
今日の出来事が思い出され、また涙が溢れそうになった。
こんな自分にどうして皆んな優しくしてくれるんだろう。取るに足らない人間なのに。
受け取るばかりで何も返せてない。
どうやって恩返しすればいいんだろう。
身体がふやけそうなくらいになるまでぼんやりと過ごし、着替えを済ませて遅い夕食を一人で取る。
日向に言えないままその夜は更けていった。
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