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第179話

そして僕はお義父さんの同意の元、一室…そこは元の日向の部屋なのだが…を借りて、二課の皆んなの協力を得て、西條の本宅に専用のFAXとパソコンを繋げてもらった。 これて仕事の環境は整った。 実際、在宅の仕事を始めてみて、勝手が違うことに戸惑いもあったが、メールや電話である程度 (はかど)るし、週一の出社の時にその分の埋め合わせはほぼできた。 涼香ママの様子を見ながら、仕事ができるというのは、本当にありがたかった。 僕の提出するレポートは社長が直々に目を通してくれ、まーちゃん課長達が、改善点があればすぐに対処してくれて仕事にも差し障りなく進めていくことができていた。 涼香ママは… 日によって体調の良し悪しが随分変わる。 昨日できてたことが今日はできなかったり、それによって、また気分の波が違う。 食欲もそうだ。 そんなママに少しでも食欲が戻るようにと、かわいい豆皿を買ってきて色とりどりの料理を少量ずつのせてみたり、ゼリーや寒天にして食べやすくしてみたり。 僕は料理ができるようになっててよかったと、つくづく思った。 智君を通じて翔さんにレシピを教えてもらったり、ネットで調べて毎日工夫してみた。 それでも、副作用のせいで全く受け付けなかったり、嘔吐する時もあった。 横になったまま起き上がれず、僕もどうしていいのかわからず、ただおろおろとするだけの日もあった。 治療が進むにつれてどんどん髪の毛も抜けていき、それを見ては二人で泣いた。 最初、涼香ママはそんな姿を見せたくないと言っていたが、そのうち僕に甘えるようになり、あれこれワガママを言うようにもなってきた。 泣いて、笑って、怒って… 戸惑いと不安とでスタートしたのだが、皆んなのお陰で僕が思っていたよりもスムーズに穏やかに日は過ぎていき、涼香ママが余命宣告を受けてから一年が過ぎ、もう少しでまた金木犀の咲く季節がやってこようとしていた。 この頃にはもう、もう、涼香ママは自分で呼吸をすることも辛くて、人工呼吸器を付けていた。 ますます動くことができなくなり、ベッドで一日を過ごすことも多くなっていた。

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